意外と知らないラーメンどんぶり、箸、レンゲについての豆知識 ~道具にこだわるとラーメンがもっと楽しくなる!~

ラーメンどんぶり3点

全国のラーメンファンの皆様、お待たせしました!本日も皆様が興味津々なラーメンにまつわるトピックをご用意しました。いつもはラーメンに使用される食材をテーマにした記事をお届けすることが多いのですが、今回は趣向を変えて、ラーメンに用いられる食器にスポットライトを当ててみたいと思います。ラーメンを食べるうえで欠かせない食器といえば、「どんぶり」「箸」そして「レンゲ」があげられます。どんぶりから箸で麺を持ち上げ、勢いよくすすり、時折レンゲでスープを味わう、これがラーメンの食べ方の王道だと思います(つけ麺、混ぜ麺など一部例外はありますが、その点については今回は目をつぶってください)。このように私たちが普段何気なく使用しているこれらの食器ですが、実はそれぞれ細かく種類が分かれていることに、皆様はお気づきでしたでしょうか?今回は、一見しただけでは気づきにくい、ラーメンどんぶり、箸、レンゲの細かな違いと、その他興味深いトリビアを皆様にお教えします。これで次回ラーメン店に行く時の楽しみがきっと増えると思いますよ!それでは今回も張り切ってまいりましょう!

 

  • Index

 

様々な形状のラーメンどんぶり

普段何気なく見ているラーメンどんぶりですが、お店によって微妙に形状が違うなとお気づきになった方もいるかもしれません。そこに気づいたあなたは非常に鋭い観察眼をお持ちです!実は、ラーメン店はその用途に応じて形状の異なるどんぶりを使い分けているのです。今回は、代表的などんぶりを5点紹介します。これらを覚えてラーメン屋に行くと、選んだどんぶりから店主のこだわりが伝わってくるはずです。
 

・高台丼(こうだいどん)/反高台丼(そりこうだいどん)

高台丼

 

高台丼(反高台丼)は最も一般的な形状のどんぶりです。恐らく皆様がよく行かれるラーメン店でも採用されているのではないでしょうか。特徴は器の底の足の部分に高さがあることと、器の縁が少し反り返っている点です。スープがたくさん入るため、満足感の高いボリュームを提供したいラーメン店に向いています。また、熱が伝わりづらい足の部分がどんぶりを持つ際に役立つ点も注目ポイントです。
 

・切立丼(きったちどん)

切立丼からラーメンを箸で持ち上げている様子

 

切立丼は、側面が丸みを帯びず、まっすぐな点が特徴のどんぶりです。高さが低く、片手で持てるほどコンパクトな器なので、博多ラーメンなど大盛りサイズを提供せず、替え玉を前提としたラーメンに向いている器です。また、重ねやすいため収納性に優れている点も魅力です。
 

・玉丼(たまどん)/玉渕丼(たまぶちどん)

玉丼に盛り付けられたラーメン

 

玉丼(玉渕丼)の一番の特徴は、器の縁が太く丸くなっている点です。このような加工を施すことで縁が欠けづらくなるようです。このどんぶりは具材の多いラーメンやちゃんぽんなどでよく使用されます。
 

・多用丼(たようどん)

多用丼

 

多用丼はその名が示すとおり、ラーメン以外にもうどん、蕎麦、かつ丼などあらゆる丼メニューに使用できる器です。
 

・麺丼(めんどん)/(麺鉢(めんばち)

麺丼に盛り付けられたラーメン

 

麺丼(麺鉢)は丸く開いた形が特徴で、大きさと深さを両立しています。見栄えの良い盛り付けをするのに最適な器と言えます。

 

■ラーメンどんぶりに描かれている模様の正体は?

雷紋が描かれたどんぶりに盛り付けられたラーメン

 

昨今では、黒や白の無地のどんぶりを使用する新しいラーメン店が増えてきましたが、昔から営業している日本のラーメン店では、上の写真のような渦巻き模様が描かれたどんぶりが良く使用されています。アメリカのラーメン店ではあまり見かけないかもしれませんが、同様の模様はアニメ「NARUTO」に出てきたラーメン店である一楽のラーメンで使用されているどんぶりにも描かれていますので、機会があれば確認してみてください。こちらの模様は正式名称を「雷紋(らいもん)」といいます。中国では三千年以上前から使用されている歴史のある模様で、その名が示す通り稲妻を表したものです。古来中国で雷は天の恵みである雨を想起させるものだったため、その点から雷紋は豊作の象徴ともとらえられていたようです。
中国で生まれたこの模様が、日本のラーメンの器に使用されるに至った経緯はやや複雑です。時は1909年、石川県出身の本清太郎が故郷の名産である九谷焼を東京で販売するために、浅草にほど近い合羽橋(本物そっくりな食品サンプル販売を含む厨房用品の卸売街として有名)に店を構えたことに端を発します。ところが装飾品としての用途が主である九谷焼は思うように売れず、いろいろと方向性を模索しているうちに浅草の飲食店向けに食器を販売することにしたようです。そうした浅草の飲食店の中には、1910年に創業し人気を博した来々軒や他のラーメン店も含まれており、そのようなラーメン店向けに専用のどんぶりを作ろうということで、その模様に中国由来の縁起の良い「雷紋」が採用されたそうです。(ラーメンは当初「支那そば」と呼ばれていたことを思い出してください。詳細は「ラーメンっていったい何だろう? 要素と歴史を押さえればラーメンの“今“が見える!」を参照ください)。また雷紋は九谷焼でもよく用いられていた絵柄であったようで、その点もこの模様が採用された決め手になったことは想像に難くありません。

 

■割り箸の違いについて

さて次は話題を「箸」に移しましょう。とはいっても素材や形状、用途まで含めたらその種類は膨大で、とてもではありませんがこの記事ですべてを語りつくすことはできません。そこで今回はラーメン店でよく見かける「割り箸」に絞ってお話を進めたいと思います。
ただし一口に割り箸といっても、高級料亭で使用されているものからコンビニエンスストアで使用されているものまで、そこにもまた膨大なバリエーションが存在します。しかしラーメン店で使用されている割り箸となると、恐らく今回紹介する3種に集約されるのではないでしょうか。次回ラーメン店に行った際には、どの割り箸が利用されているか、是非チェックしてみてください。

 

・元禄(げんろく)

元禄箸

 

元禄箸は市場で最も流通している箸です。溝がついているため割りやすく、しかも安価な点が特徴で、主な材質はアスペン、白樺となっています。その名の由来は江戸の中期、元禄時代に生まれた「元禄小判」で、財政難の幕府が金の量を減らして鋳造した小判として知られています。元禄箸は箸の四方の角を削ったり、割れ目に溝をつけるなどして木の分量を減らして製造されているので、そこからこのような名がつけられたとされています。

 

・天削(てんそげ)

天削箸

 

天削げは割り箸の持ち手側の角を斜めにカットし、木目の美しさを強調したデザインです。主な材質はエゾ松、竹、杉となっており、主におもてなし用として使用されます。

 

・双生箸(そうせいばし)

双生箸

 

双生箸は持ち手側の端がつながっており、先端が細く丸くなっている点が特徴です。材質は竹が使用されており、そのおかげで強度があり、さらに油を吸わないことから、ラーメン店以外でも揚げ物を扱う飲食店で好んで使用されています。時折うまく割れない元禄箸と比較して、きれいに割ることができる点もプラスポイントです。

 

■箸袋で箸置きを作ってみよう

少し箸休めとして、箸にまつわるこんな話題はいかがでしょうか。巷では日本人は手先が器用だという通説がありますが、それを証明する一つの方法として、もしあなたのお友達に日本人のお友達がいたら、今度試しにラーメン店に連れて行くことをお薦めします。その時にお願いをすれば、割り箸の紙袋で器用に箸置きを折ってくれる可能性が非常に高いです。それを見たら「日本人は手先が器用」という通説が信ぴょう性の高いものに思えてくるかもしれません。ただし種明かしになるのですが、実は割り箸の袋で箸置きを折るのは思ったよりも難しくないのです。箸置きの作り方を説明したビデオを皆様に共有しますので、見ていただくとそれがお分かりになると思います。このビデオで箸置きの折り方をマスターしたら、次にラーメン店に行った際はぜひあなたもトライしてみてください!
 

 

■日本で独特の進化をしたレンゲ

最後にレンゲについて掘り下げてみましょう。レンゲは「Chinese spoon」とも呼ばれている通り、中国由来のものです。レンゲが日本に渡ってきたのは平安時代のころのようで、かなり長い歴史を持つ食器です。しかし、レンゲの需要が増えたのはラーメンを提供する店での使用がきっかけで、レンゲが日本で一般レベルにも浸透したのはごく最近(といっても百年ほど前)のことだと言えそうです。一説には日本人は器から直接スープをすする文化が浸透していたため、レンゲの浸透が遅れたと言われています。
レンゲの名前の由来は非常に美しいものとなっています。レンゲの正式名称は「散蓮華」といい、その形状を散った一枚の蓮の花びらに見立てたことから、その名がつけられています。確かに蓮の花を今一度見てみると、レンゲの形状に酷似していることが分かります。昔の人は非常に風流ですね。

 

蓮の花

 
レンゲも材質や形状まで考慮すると様々なタイプがあります。例えば材質なら陶製、木製、昨今では一体成型で安価なプラスチック製も一般に浸透しています。ただし、ラーメン店で使用されているレンゲ、という点に着目し、ここでは以下二つのレンゲにスポットライトを当てたいと思います。
一つ目は、すくう部分の根元に切り込みを設けて、器の端に引っ掛けることのできるレンゲです。皆様の中にはラーメンを食べている最中にレンゲをスープの中に滑らせて、レンゲを汁まみれにしてしまった経験をお持ちの方は少なくないと思います(私もその一人です)。おそらくそうした不満を解消すべく、この改良版レンゲは考案されたのでしょう。このレンゲを初めて見た時に「必要は発明の母」という言葉が頭をよぎったことは今でも忘れません。

 

レンゲが添えられたラーメン

 
もう一つご紹介したいのは、穴あきレンゲです。こちらはコーンを具材に使用したラーメンや、ひき肉を使用した担々麺などを食べる時に非常に重宝します。この穴あきレンゲを使用すれば、スープをすくわずに具材だけを簡単に引き上げることができます。穴あきレンゲでコーンを探し当てた時の感動は、さながらゴールドラッシュ時に砂金を探し当てた感動に近いものがある、と言っても過言ではないでしょう(ちょっと誇張が過ぎましたか?)。

 

穴あきレンゲが添えられたラーメン

 

この二つのレンゲに共通して感じることは、ラーメンを気持ちよく食べてもらうことにかける日本人の情熱です。こんなところにまで発揮される日本人のKaizen Spiritには本当に感服です。

 

■結論

今回はラーメンを食べるうえで欠かせない食器である、どんぶり、箸(割り箸)、レンゲについて掘り下げてみました。いかがだったでしょうか?非常に興味深い情報が盛りだくさんとなった今回の記事ですが、実は書ききれなかった情報もいっぱいあるんです。例えば、今回紹介したラーメンどんぶりの模様である「雷紋」以外にも、実はラーメンどんぶりには特徴的な模様がまだまだたくさんあります。これらを掘り下げるだけで一つの記事ができそうなので、もし機会があればいずれ皆様に紹介させていただきます。
それでは今回はこの辺りで以上とさせていただきます。次回もラーメンファンの皆様がワクワクするようなトピックを用意しておりますので、楽しみに待っていてくださいね!

 

参照リンク:

ラーメンどんぶりの種類と模様の意味|有限会社 和泉屋
【ラーメン丼の形について】SHOWA SEITO CO.,LTD.
【ラーメン】器・どんぶり「模様や絵柄」の意味と由来について。 | ニライカナイのいろは
ラーメン丼の模様の意味:龍やうずまきが書かれるのはなぜ? | 株式会社GRAST
ラーメン丼の渦巻き模様「雷紋」の秘密 – 知ると得する栄養雑学・豆知識:アスレシピ
雷紋 – Wikipedia
散蓮華 – Wikipedia
割り箸の様々な形状や材質における解説と専門業者に相談するメリット | 折兼ラボ | 株式会社折兼
『れんげ』を購入する前に知っておきたい、れんげ選びのポイント3選|USENの開業支援サイト|canaeru(カナエル)
ラーメンのお供レンゲの歴史 | 苫小牧のラーメン店 RAMEN LAB REN ~煉~