フードデリバリー日米比較:ラーメンデリバリーもここまで進化しました!

フードデリバリーサービス

全国のラーメンファンの皆様、お待たせしました。今回は近年目覚ましい発達を遂げているフードデリバリー事情について取り上げてみたいと思います。皆様は、現在アメリカで約60%もの人々が最低週一回、食事をテイクアウトかデリバリーでオーダーしていることや(参照:20 Food Delivery and Online Ordering Statistics for 2021 ) 全国のラーメンファンの皆様、お待たせしました。今回は近年目覚ましい発達を遂げているフードデリバリー事情について取り上げてみたいと思います。皆様は、現在アメリカで約60%もの人々が最低週一回、食事をテイクアウトかデリバリーでオーダーしていることや(参照:The Tasty History of Takeout & Delivery ) はご存じでしたでしょうか?それくらいフードデリバリーはもはや現代の我々の生活においては欠かせないものとなっています。そこで今回は、古くはピザの宅配から始まり、インターネットを利用したデリバリーオーダーシステムを経てDoorDashやUber Eatsなどのオンラインフードデリバリーサービスまで発展した一連の歴史が、我々の食生活にどのような影響を及ぼしたのかを掘り下げてみたいと思います。また、このようなフードデリバリーサービスが私たちが取り扱うラーメンとどのような関わりを持ってきたのか、また今後どのような展開を見せていくのかについても、日本のフードデリバリー事情も交えながらお伝えできればと思いますので、最後までお付き合いいただけましたら幸いです。それでは早速始めましょう!

 

  • Index

 

■アメリカのフードデリバリーの歴史について

牛乳

 

まずは、アメリカにおいてどのようにフードデリバリーサービスが発展してきたのかについて、その始まりから順を追ってご紹介してみたいと思います。アメリカにおいてフードデリバリーといえば、まず、ピザを思い浮かべる方も多いとは思います。しかし、実はそれより先んじてデリバリーが行われていたのが牛乳でした。牛乳のデリバリーが始まったのは1785年頃で、工業化が進んだことにより牛乳を得やすい田舎から、そうではない都会へ移住した人々の需要に応えるために始まったとされています。まだ冷蔵庫が一般家庭に普及していなかったことも手伝って、毎日フレッシュな牛乳を届けることのできたこのサービスが、都会で生活する人々にとってだんだんと不可欠なものとなっていったようです。

 

チャイニーズテイクアウトボックス

 

次にアメリカでフードデリバリーサービスを掲げたのは、なんと中華料理でした。1929年ロサンゼルスにあるKin-Chu caféが「西海岸で唯一、本格的な中華料理を宅配する店」と広告を打ってサービスを開始したのです。Kin-Chu caféはアメリカで初めてデリバリーサービスを提供したレストランといっても差し支えないでしょう。このサービスは好評をもって迎えられましたが、1930年代に起こった世界恐慌、並びにその後に続く第二次世界大戦のあおりを受けて、残念ながら終了することとなってしまいました。

 

宅配ピザ

 

第二次世界大戦後に、ようやくピザをフードデリバリーサービスとして提供していこうという動きが出てきます。戦後イタリアで兵役についていた人々が本国に帰還し、現地で食べた本場のピザの味が忘れられずに、帰国後もピザを食べたいという思いが高まりました。そうした需要に応えるべく、ニューヨークやロサンゼルスのピザレストランがデリバリーを始めたのが、ピザデリバリーサービス開始のきっかけだったといわれています。そこからドミノピザやピザハットなどのフランチャイズ店が全国に展開したこともあり、フードデリバリーで頼むものといえばピザというイメージが人々に刷り込まれることになります。
インターネットが登場した際も、そのフードデリバリーサービスに対する応用の可能性にまず気づいたのはピザ業界でした。1990年に、ピザハットはPizzaNet, というウェブサイトを公開しました。このウェブサイトは、オンラインでピザがオーダーできる初めてのウェブサイトであると同時に、インターネット上で初めて料理を販売したウェブサイトといえそうです。ちなみにPizzaNetに来た最初の注文は「A large pepperoni with mushrooms and extra cheese」だったそうです。
ここまでは、フードデリバリーといえばピザという時代が続きますが、更なるインターネットの発展に伴い、注文できる料理のバリエーションも多様化していきます。そのパイオニアとなったのは、1995年にサービスを開始したwaiter.comでした。サービス開始当初はサンフランシスコのベイエリアに存在する60あまりのレストランに限定はされていましたが、ウェブサイトを通じて登録されているレストランに対してのデリバリーオーダーを可能にしたwaiter.com は、今日ではウェブサイト初のオンラインレストランデリバリーサービスとみなされています。
その後は、デリバリーサービスを自前で持たないレストランに代わってデリバリーサービスを代行するDoordash、Uber EatsやGrubhubなどのオンラインフードデリバリーサービスが、その提供する料理のバリエーションもあって、次第に人気を博していくこととなります。この時点で、フードデリバリーとはピザだけを宅配するものではなくなりました。その後、コロナの影響で人々が外出を避け外食産業が経営難に襲われる中、人同士の接触機会を最小化するフードデリバリーサービスが大きな注目を集めたことは、皆様の記憶にも新しいところだと思います。このような経緯を経て、現在のアメリカではもはや、多種多様な料理を運ぶフードデリバリーサービスは、皆様の生活に定着したといえるでしょう。

 

■日本のフードデリバリーの歴史について

日本橋 朝之景 東海道五拾三次 歌川広重

 

一方、日本ではどのようにフードデリバリーサービスが発展していったのでしょうか?その歴史は古く、江戸時代中期ごろまで遡ります。現代のフードデリバリーサービスの前身にあたるこのサービスは「出前(literally means “to go in front of”)」と呼ばれていました。現在、日本で最も人気のあるオンラインフードデリバリーサービスの1つである「出前館」がその名称を含んでいることからわかるとおり、出前は日本人の食文化に深く根づいています。
江戸時代に発達した出前は、大きく分けて「注文を受けて家まで配達する」タイプと、食べ物を売り歩くタイプに分かれていました。前者に関しては、一説には自由に外に出ることができなかった吉原の遊女たちに料理を運んだことが発祥だと言われています。その当時注文されていた料理は、蕎麦やうなぎだったようです。後者に関しては、木桶やかごなどを前後につけた天秤棒を担いで、食べ物を売り歩いていた商人によって商いが行われていました。このような商人は「棒手振り」と呼ばれ、その様子は浮世絵や時代劇でもよく目にすることができます。彼らが販売していた食べ物は、新鮮な魚や野菜などの食材から、お豆腐や納豆、さらにはお惣菜など非常に多岐にわたります。また彼らの取り扱い商品は食べ物だけにとどまらず、漢方薬や朝顔などの生活用品も取り扱っていたようです。その中でも特に注目したいのが金魚です。独特な声を上げて街中を練り歩き金魚を販売する「金魚売」という職業は、多くの日本人にとって今でも夏を感じさせる季節の風物詩となっています。

 

金魚売

 

このように江戸時代から始まった日本の出前ですが、時が経ち時代も昭和になると自転車の導入もあって更なる発展を遂げました。皆様の中には、幾層にも積み重ねられたそばを肩に担いで自転車に乗り、注文を届けている宅配人の写真を見かけた方もいらっしゃるかもしれません。これが昭和時代の出前を象徴する一つのスタイルと言えるでしょう。ちなみに、その当時出前を採用した外食産業は、蕎麦屋、中華料理店、寿司屋、喫茶店などが挙げられます。この時点でフードデリバリーサービスを利用するユーザーの選択の幅が格段に広がりました。

 

片手で出前を運ぶ自転車に乗った職人

 

インターネットが一般的になった現在の日本では、アメリカ同様にオンラインフードデリバリーサービスを活用することが一般的となり、レストランで注文できるメニューの多くが自宅でも楽しめる状況になっています。ちなみに、日本で人気のあるオンラインフードデリバリーサービスは、前述の「出前館」以外に、アメリカから上陸した「Uber Eats」が挙げられます。そして江戸時代の出前から始まった日本のフードデリバリーサービスは、2021年度において、とうとう市場規模推定4兆4,400億円にまで成長しました(参考:Market size of food delivery in Japan from fiscal year 2016 to 2021 with forecasts until 2026 )。このことからも、日本においてフードデリバリーサービスが生活の一部として不可欠になっていることがうかがえます。

 

■ラーメンデリバリーが抱える課題とその解決策

これまで、アメリカと日本におけるフードデリバリーサービスの成り立ちについて述べてきました。その起源においては文化的背景の差もあり、大きく異なるものとなっておりました。しかし、最終的にはどちらの国においてもオンラインフードデリバリーサービスを通じて、レストランのメニューが自宅にいながら注文できるまでに発展したことは、興味深い現象といえます。そして現在オンラインフードデリバリーサービスを通じて我々が注文できるメニューの中には、もちろんラーメンも含まれています。ただし、ラーメンは他のメニューと比べてとりわけ宅配が難しいメニューとされています。その主な理由として「麺が伸びやすい」「スープが冷めやすい」といった特性が挙げられます。このチャプターでは、ラーメンサービスに携わる人々が、このような難問にどのように対応してきたかについて掘り下げてみたいと思います。

 

岡持ち

 

前述の日本のフードデリバリー事情でも触れましたが、日本において昭和時代に出前サービスを採用した外食産業の一つとして中華料理店が挙げられます。中華料理店ではたいていラーメンもメニューに含まれていたことから、中華料理店によるラーメンの出前対応が、ラーメンデリバリーの始まりとみてよさそうです。なお、この際の出前で主に使用された持ち運び用の箱は「岡持ち」と呼ばれ、中華料理店で使用されるものはアルミニウム製で嵌め込み式の蓋を上下にスライドさせるものが多かったようです。また、実際に運ぶラーメンに関しては、お店で使用されている丼をそのまま使用して、配達時には上にサランラップをかけて汁漏れを防ぐ方法が一般的にとられていました。残念ながらこの方法では宅配にかかる時間によっては麺が伸びてしまうことも考えられましたし、スープのこぼれを十分に防ぐことはできませんでしたが、それでも中華料理店で提供されるクオリティのラーメンをそのまま自宅で食べれることは、当時の人々にとって非常にありがたいことでした。なお、出前に使用された食器はお店で使用しているものと同じもので、食事の後は空いた食器を玄関においておけば後日お店の店員が回収してくれました。この点も、使い捨ての容器が使用されることの多い現在のフードデリバリーサービスと大きく異なる点だといえます。
この後、時代が進むにつれ中華料理店以外にラーメンに特化してレストラン経営を行う、いわゆる「ラーメン専門店」が折からのラーメンブームも相まって日本中で開店しました。ラーメン専門店の多くは提供メニューをラーメンに絞ることによって、高い品質のラーメンを店舗で提供することにこだわりぬきました。彼らはラーメンを宅配することによって麺が伸びてしまう点においても妥協を許さず、その結果多くのラーメン専門店は「ラーメンデリバリー」という選択肢をサービスの中から消してしまったのです。ですので、意外なことに日本人にとってもラーメン専門店のラーメンを家で食べる、という体験は最近になるまでそれほど一般的なものではなかったのです。「ラーメン専門店のラーメンを最高の状態で味わうためには、お店に足を運ばなければならない」という共通認識が、日本人の中で醸成されていたといえるでしょう。
ただし、その状況もコロナによって一変してしまいました。通常通りの店舗経営が困難な状況になったことで、ラーメン専門店もデリバリーに活路を見出さなければならない状況に追い込まれました。ただし、お客様へ提供するラーメンの品質は可能な限り最高のものを届けたい、という彼らの思いが様々な素晴らしいアイデアを生み出したのです。
まず、店舗ではラーメンを提供するが、デリバリーではまぜそばやつけ麺など極力麺が伸びないメニューを提供することでサービスクオリティを保とうとするラーメン専門店が出てきました。こうした状況は今日まで続くMazemenブーム(参照: 「MAZEMEN」「油そば」「まぜそば」の違いとは? ) の動向に対して少なからず影響を与えている要素かと思われます。
次に、スープ、麺、具材をそれぞれ分けて届けるラーメンデリバリーが登場しました。中には茹でる前の麺を届けるラーメン店も登場し、注文した側ではその分、麺を茹でるひと手間がかかってしまいますが、いずれにしても伸びていない麺を自宅で味わうことが可能となり、ラーメンデリバリーの質が飛躍的に向上しました。
驚くべきことに進化はここにとどまりませんでした。質の高いラーメンを届けることには成功したものの、スープ、麺、具材をそれぞれ分けて届ける必要がある関係上、どうしても余分な器が増えてしまいます。それを解決したのが、中皿と丼が一体化したデリバリー特化型容器です。中皿を用いることで余分な容器を用いずに宅配時の麺と具材をスープと分けることができるため、梱包や宅配の手間が大幅に解消されました。その他、スープを熱々の状態で届けるために保温性にこだわった容器や、電子レンジにそのままかけることのできる耐熱性に優れた容器など、ラーメンデリバリーの進化を支える多くの技術が生まれました。こうして、今ではお家でも、ラーメン専門店のラーメンがお店で食べるのとほぼ同様のクオリティで楽しめるようになったのです。

 

■まとめ

今回は、日米のフードデリバリーの進化を概観しつつ、ラーメンにどのような影響を与えてきたかについて掘り下げてみました。数々の経緯を経て、現在ではフードデリバリーをはじめ、ラーメンをいつでもどこでもおいしく食べるあらゆる手段を見つけることができるのですが(Myojo USAが提供するFresh Ramen Noodlesシリーズもその一翼を担っていると自負しております)、ひょっとしたら「おいしいラーメンをいつでもどこでも食べたい」という消費者の熱烈なニーズと「おいしいラーメンを届けたい」というラーメンサービスに携わる人々の情熱の相乗効果がラーメンを食べる環境の進化を後押ししているのかもしれません。

 

ドローン

 

最後に、ラーメンデリバリーの未来について少し考えてみたいと思います。最近、フードデリバリー業界で話題となっているのがドローンや無人自動運転車を利用したフードデリバリーサービスです。一部の地域ではすでに実用化されているというニュースも耳にしますが、例えばドローンがラーメンを自宅に届ける未来は近いうちにやってくるのでしょうか?個人的にはそのような未来はおそらく近いうちに訪れるのではないかと思います。その過程で様々な課題が発生するかと思いますが、コロナの際においしいラーメンを宅配するうえで発生した様々な課題を次々と解決したように、きっと素晴らしいアイデアで乗り切ってくれることでしょう。ラーメンが空を飛んで自宅にやってくるような未来は、江戸時代の人々はもちろん私たちが子供の頃も想像しえなかったことですが、これでますますラーメンを食べることが身近になると思うと、なんだかワクワクしますね。
今回の記事は以上となります。我々の生活にとって既に身近な存在となったフードデリバリーサービスですが、この記事を読んで新たな発見がありましたら幸いです。それでは次回も興味深いラーメントピックをご紹介いたしますので、楽しみに待っていてくださいね!

 

Reference links:
Food delivery – Wikipedia
出前 – Wikipedia
岡持ち – Wikipedia
The history of food delivery: from local milk delivery to robots at your doorstep
The History Of Food Delivery: How Fast Takeout Became A Human Fact Of Life | History Daily
The History & Evolution of Food Delivery | Underscore_
20 Food Delivery and Online Ordering Statistics for 2021
Ordering in: The rapid evolution of food delivery | McKinsey
How did food delivery start? History of food delivery
History of Takeout & Delivery: When Did Food Takeout & Delivery Start? – Thrillist
History of Food Delivery and How It’s Changed
A Brief History of Food Delivery A Brief History of Food Delivery
Satisfying An On-demand Appetite For Food Delivery Services In Japan – Tokyoesque
Food Delivery: from Edo to present in Japan | Japan Travel by NAVITIME – Japan Travel Guides, Transit Search and Itinerary Planner
出前からデリバリーへ|飲食業の時代の変化についていく! | 食品包装容器 |木村容器株式会社
振売 – Wikipedia
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