【ビリヤラーメン】メキシコ料理がもたらす 新たなラーメンの可能性

2022年5月4日 - この記事は5分で読めます

5月5日はシンコ・デ・マヨ、メキシコの勝利を祝う記念日です。本来は1862年5月5日にプエブラの会戦で装備不十分だったメキシコ軍がフランス軍に勝利したことを記念して設けられた祝日。現在では、アメリカに住むメキシコ系アメリカ人が、自分たちの伝統を祝う祝祭の日として広く認知されています。その盛り上がりは本国メキシコ以上で、シンコ・デ・マヨで消費されたビールがセントパトリックデーやスーパーボウルで消費されたビールの消費量を上回ったという記事もあるほどです。

シンコ・デ・マヨは、「食べ物」「飲み物」「ダンス」でお祝いをします。ナチョスやタコスなどのメキシコ料理を食べて、テキーラで乾杯し、カラフルな衣装を着て音楽に合わせて楽しく踊る、華やかで盛大なお祭りです。定番の食べ物は、メキシコの伝統的な料理。タコスやワカモレなどおなじみのものから、タマルやポソレなどスペイン人侵略以前からメキシコで食されていた料理がシンコ・デ・マヨを祝うのにぴったりな料理として考えられています。

今回は、シンコ・デ・マヨをお祝いするメキシコ料理に関連して、メキシコの食文化と融合した「ラーメン事情」についてご紹介します。特に、今注目したいのは「ビリヤラーメン」です!おそらくこの記事を読んでいるラーメン好きの方ならば1度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。ひょっとしたらすでに実食済みの方も少なくないかもしれません。そう、ビリヤラーメンは近年アメリカで注目を集めている新たなラーメンブームの一つなのです。その名前に含まれている「ビリヤ」から推察できるように、このラーメンは先行してSNSを中心に大きな盛り上がりを見せている「Quesabirria(birria tacos)」と密接な関係があります。今回はそんなビリヤラーメンに注目しつつ、メキシコ料理自体がこれからもたらすであろう新たなラーメンの可能性について見ていきましょう。

  • 目次

 

■そもそも「ビリヤ」って何?

ビリヤとは、メキシコの伝統的なシチュー(スープ)料理です。唐辛子やヤギ肉、ニンニク、タイムなどを弱火でじっくりと煮込んで作る料理で、コリアンダーやオニオンなどをトッピングして食べられています。現在では、ヤギ肉に代わりラム肉や牛肉で煮込んだ料理も登場しており、ほろほろとした柔らかいお肉が入っていることが特徴的です。近年、ビリヤはタコスを浸して食べるスープとして、アメリカで大人気です。アメリカでのブームを巻き起こすまでに至った、ビリヤのルーツ、そしてビリヤラーメンへの進化について見ていきたいと思います。

■ビリヤの歴史

ここでは、まずビリヤの歴史をおさらいすることから始めましょう。ビリヤはもともとメキシコのハリスコ州で生まれた料理でした。ビリヤはスペイン人が持て余したヤギ肉を、メキシコに持ち込んだことから生まれました。獣臭く筋張ったヤギ肉をおいしく料理するために、当時のメキシコ人はハーブやスパイスを駆使し結果的にビリヤという素晴らしい郷土料理を生み出したのです。スペイン人がヤギ肉を持て余した結果メキシコ人に提供したことは、ビリヤという名前がスペインでは「価値のない」という意味の蔑称であったことからもうかがえます。

こうして生まれた初期のビリヤは、シチューのように煮込むタイプのものではなく肉を蒸し焼きにするような調理技法が取られていました。これが、現在一般的なシチュー状のものになったのは1950年頃。プエブラのコアツィンゴからティファナに移ってタコス屋を始めたGuadalupe Zárateが肉が焦げないようにビリヤに水を加えたのがきっかけと言われています。同時にZárateはビリヤで伝統的に使用されていたヤギ肉を牛肉に切り替えました。こうして生まれたビリヤは、チリ、トマト、タマネギ、ニンニク、そしてたくさんのハーブとスパイスが詰まった風味豊かなソースで作られたメキシコ風ビーフシチューのようなものでした。このような経緯で変貌を遂げたビリヤはティファナ風のbeef birria(birria de res)として現地で人気を博することになったのです。

ビリヤの進化はここにとどまりませんでした。2000年代にはbeef birriaを具にしたタコスがティファナで考案されます。トルティーヤにbeef birriaとチーズを挟んで調理されたこの料理は、Quesabirria(cheese birria)と呼ばれ評判を呼びました。Quesabirriaの第一の特徴はその食欲をそそる赤い見た目です。これはトルティーヤを焼く前にbeef birriaの上澄みオイルに浸すためです。そして第二の特徴は、beef birriaのシチューをカップに注いで一緒に提供される点です。このシチューは「consommé」と呼ばれ、Quesabirriaを食べる際にはこのconsomméに浸して食べます。

■SNSから始まったビリヤブーム


Image by ©Sarah Stierch,Flickr.com

こうして誕生したQuesabirria(“birria tacos”という名前の方がなじみ深いかもしれません)ですが、アメリカでもこのQuesabirriaは一大旋風を巻き起こします。その震源地はロサンゼルスでした。Quesabirriaを一躍米国内メキシコ料理のスターダムに押し上げたのは、Quesabirriaをティファナからロサンゼルスにもたらした“Birrieria Gonzalez”と“Teddy’s Red Tacos”の2店の功績が非常に大きいです。特にBirrieria Gonzalezのインスタグラムアカウントが2018年11月4日に投稿したポストを皮切りに、Quesabirria をconsomméに浸すというユニークな食べ方がSNS上で非常に話題になりました。

インフルエンサーがその独特かつ“インスタ映え”する食べ方に注目してイメージ投稿を続けたこともあり、Quesabirriaは一躍インスタグラム上でのバイラルコンテンツとなりました。このようなSNS上での盛り上がりが後押しし、Quesabirriaを提供するレストランはその数を順調に増やしました。現在ではQuesabirriaの人気は全国的規模になったといっても過言ではないでしょう。そしてその人気はまだまだ衰えを見せていません。

■ビリヤブームのセカンドウェーブである「ビリヤラーメン」とは?

現在も継続中のQuesabirriaブームですが、このブームの流れの中で新たな動きが起きています。それが今回注目したい「ビリヤラーメン」です。ビリヤラーメンはその名に含まれている通り、ビリヤのシチューをスープとして使用したラーメンです。これが現在Quesabirria好きとラーメン好きの双方から密かに注目を集めています。

ビリヤラーメンは2015年ごろにメキシコシティで誕生しました。テレビ番組にも出演している有名なシェフであるAntonio de Livierが、自身が経営するレストランÁnimo Ay Caldos!で提供するために考案したメニューがビリヤラーメンだったようです(Ánimo Ay Caldos!ではBirriamenという名前で提供されています)。彼のレストランが提供するビリヤラーメンは今では1日に350杯も売れるほど人気を博しています。

そんなビリヤラーメンがアメリカに上陸したのは2019年頃。L.A. TACOによるこちらの記事によると、ロサンゼルスに店舗を構えるL.A. Birria が、彼らの知る限り「ロサンゼルスで初めてビリヤラーメンの提供を開始した」レストランのようです。この記事が公開されたのが2019年10月11日なので、その頃には既にビリヤラーメンはロサンゼルスに初上陸を果たしていたことになります。またL.A. Birriaを皮切りに、同じころロサンゼルスではCocina Los Vがビリヤラーメンをメニューに加えて行列ができるほどのヒットを飛ばしています。さらに、テキサスではCalisienceが提供するQuesabirriaとビリヤラーメンが1時間待ちの行列ができるほどの評判を呼んでいます。すでにQuesabirriaが全米での認知を獲得していることも手伝って、その派生物であるビリヤラーメンは西海岸から徐々にその人気を広めており、その人気が全米に広まるのは時間の問題です。

■自宅でBirria Ramenを作ってみよう!

現在人気沸騰中のビリヤラーメンですが、まだまだ提供するレストランの数は限られています。こちらでは、ビリヤラーメンを食べられるレストランの一部をご紹介。まだその所在地はロサンゼルス近郊に集中していますが、いずれは全米各地で目にすることが増えると予想されます。

L.A. Birria
3330 S Central Ave, Los Angeles, CA 90011
https://losangelesbirria.com/
Instagram: @l.a_birria

Cocina Los V
4122 E Olympic Blvd, Los Angeles, CA 90023
https://cashdrop.biz/cocinalosv
Instagram: @cocina.los.v

Calisience
3318 E Belknap, Fort Worth, TX 76111
http://www.calisience.com/
Instagram: @calisience

ビリヤラーメンは、食べられる場所こそ今は少ないですが、実はご自宅でも簡単に再現可能なラーメンです。今回は、ご自宅でビリヤラーメンを作る方法をご紹介します。明星でも、自社の麺を使用して再現してみました。メキシコ料理店でスープのご購入が可能な方や、ご自宅にビリヤの残り物のスープがある方はぜひお試しください。

<自宅で作るビリヤラーメン>

  1. メキシコ料理店でスープを購入/もしくはご自宅にあるビリヤの残り物を使用
    Quesabirriaが流行したことをきっかけに、「consommé」という名前でシチューを販売するお店が増えています。この「consommé」を購入し、ラーメンのスープとして使用します。メキシコ料理を作られるご家庭では、ビリヤの残り物でお試しください。
  2. 麺を用意
    市販のラーメン用の麺を用意します。麺を茹で、1のスープと合わせます。明星ラーメンがご自宅に残っている方は、ぜひ明星の麺でもお試しください!
  3. トッピングをのせて完成
    「consommé」を購入すると、コリアンダーやオニオン、レモンが付いてくるお店もあるようです。お好みの具材をのせて、ビリヤラーメンの完成です。

 

■日本人が生み出した「メキシカンフュージョンラーメン」とは?

ビリヤラーメンはメキシコ料理とその文化的バックグラウンドを持つ人たちが、彼らの郷土料理であるビリヤをベースに生み出した新しいスタイルのラーメンであるといえます。このような動きに呼応してか、日本人も彼らが母国で親しんだラーメンをベースにそこにメキシコ料理の要素を取り込むことで新たなラーメンを生み出そうとしています。ここではそんな興味深い試みの数々を紹介したいと思います。

まず紹介したいのが、こちらの動画で紹介されている「Shrimp Ceviche Ramen」と「Spicy Chili Lime Ramen」です。

これらのラーメンを考案したレストラン”Ramen Izakaya”のChefであるNoriさんは、日本のラーメンをベースにメキシコ料理のエッセンスを取り込み、魅力的なラーメンを生み出すことに成功しています。特にShrimp Ceviche Ramenは、日本の冷やし中華から発想を得た非常にクリエイティブなものとなっています。こちらはメキシコのセビーチェとラーメンを組み合わせることで、夏にもさっぱりと食べられる冷たいラーメンです。「ラーメン=熱いスープと一緒に食べる麺」という考えが一般的に浸透しているアメリカでも、驚きをもって受け入れられることと思います。

Ramen Izakaya
13727 Victory Blvd, Valley Glen, CA 91401
Website: https://ramenizakaya.com/
Instagram: @ramen_izakaya

「ラーメンとメキシコ料理を融合させたら何か素敵なことが起きるんじゃないか?」という着想を得たのは、プロのシェフばかりとは限りません。ラーメン好きのアマチュアの方も以下の動画で素敵なメキシカンフュージョンラーメンを披露してくれています。

こちらで紹介されているラーメンは二種類、「ファヒータ + 醤油ラーメン」と「エローテ + 豚骨ラーメン」です。ファヒータは厳密にいえばテクス・メクス(テキサス併合前からテキサスに住むヒスパニック系住民によって生み出された料理)に属する料理です。今回は特にメキシコ料理に関連深い、「エローテ + 豚骨ラーメン」に注目してみたいと思います。メキシコの屋台でよく見かけるエローテはマヨネーズ味が特徴ですが、一見ミスマッチに思える豚骨スープとの相性の良さを発見したその大胆な試みは、逆にプロのシェフでは考えつかなかった発想かもしれません。アメリカでは数あるラーメンの中でも豚骨ラーメンが人気のため、このコンビネーションは全米でもブレイクするポテンシャルを秘めています!日本にはコーンを具材に取り入れた札幌ラーメンも存在しますので、ひょっとしたら日本人にも受け入れられやすいかもしれませんね。

*この動画で使用されている商品はこちらです。

ファヒータ + プレミアムベジタリアン醤油ラーメン
PREMIUM VEGETARIAN SHOYU RAMEN

エローテ + プレミアム塩豚骨ラーメン
PREMIUM SHIO TONKOTSU RAMEN

ここでご紹介したのは、メキシカンフュージョンラーメンのごく一部。メキシコ料理と日本のラーメンは、双方の持ち味を生かしながら、まだ見ぬ新しい味を模索しお互いに歩み寄っている最中です。このような動きから、近い将来生まれるであろう新しいラーメンに今後も注目です。

■結論

今回は、メキシコのお祭り、シンコ・デ・マヨに関連して、様々な食文化へと融合する「メキシコのラーメン事情」をご紹介しました。メキシコ料理は、2010年にユネスコの無形文化遺産に登録された伝統料理です。今では、ビリヤラーメンやテクス・メクス料理など、日本をはじめ様々な国や地域の食文化と融合し、新たな料理が生み出されています。もともと、麺料理が主流ではなかったメキシコですが、別の食文化との結びつきを通して、「メキシカンスタイルラーメン」として新たな流行が広がっています。多くのスープバリエーションを持つメキシコ料理。今後も、ビリヤラーメンに次ぐ、新しいラーメンが誕生する可能性に期待が高まります。

シンコ・デ・マヨを彩る料理として、普段の料理のバリエーションとして、今回ご紹介したラーメンをぜひお試しください。

皆さんにとって、自分好みのメキシカンスタイル料理を見つけてみてくださいね。

シンコ・デ・マヨのお祝い料理に、ラーメンが新たな一員として加わることを期待して…

Happy Cinco de Mayo!
参考:

メキシコ料理 – Wikipedia
シンコ・デ・マヨ – Wikipedia
シンコデマヨとはメキシコが世界に誇る祝日!お祭りの全貌を一挙解説 | アメリカ info
Cinco de Mayo beer sales outpace St. Patrick’s Day and Super Bowl | Fox News
11 Authentic Cinco de Mayo Foods and Facts | Hy-Vee
The Real History of Cinco De Mayo, and How It’s Celebrated Around the World | Insider
Birria – Wikipedia
Quesabirria – Wikipedia
The Origins Of The Birria Taco | Vallarta Eats Food Tours
Birria and ramen. It just makes sense | Los Angeles Times
East LA food stand fuses ramen and birria into one – ABC7 Los Angeles
Birria Ramen Are Like Two Homies, but This Is How You Take It to the Next Level – Oishii Desu “It’s Delicious”
米国で一番人気のビリヤラーメン メキシコ料理とラーメンの融合 – みそラーメン
‘Birria Ramen’ Arrives in L.A., Tacos 1986 Pop-Up at Animal Tonight, and Taco Trucks Hope to Ease New Rideshare Anxiety at LAX: The TacoWire – L.A. TACO
Birria Ramen Has Come to Fort Worth, and It Is Glorious – Texas Monthly
How Birria Became America’s Hottest Taco Trend in 2020 – Eater
テクス・メクス料理 – Wikipedia
Easy Quesabirria Recipe | VICE