全国のラーメンファンの皆様、こんにちは!素敵なラーメンライフをお過ごしでしょうか?おそらくラーメン好きの皆様のことですから、これまでに引き続きおいしいラーメンの探索に余念がないと思います。そんな探索の中で最近出会った印象的なラーメンの味を覚えてますか?それは豚骨、醤油?恐らく印象に残ったラーメンであればきっとそのスープの味わいは覚えていることでしょう。では、そのラーメンの麺が「縮れ麺」か「ストレート麺」だったかは覚えていますか?ひょっとしたら答えに窮してしまうかもしれません。しかし麺の形状も、スープ同様にラーメンの味わいに大きな影響を与える要素だということは、ラーメンにこだわりのある方であれば想像に難くないと思います。さらに、それぞれの麺の形状によって相性の良いスープがあるとしたら、より興味が湧きませんか?
本日はラーメンの麺の形状、その中でも特にラーメンならではのユニークな麺の形状である「縮れ麺」について、いろいろと掘り下げてみました。ぜひ最後までお付き合いください。
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■縮れ麺と相性の良いスープは?

ラーメンにおいて用いられる麺のバリエーションは様々です。その中でも一番わかりやすいのは太さのバリエーションではないでしょうか。例えば、極太麺が用いられることで有名な二郎系ラーメンは2.5mm程度、細麺でお馴染みの博多ラーメンでは1mm強の麺が使用されています。この点においてはラーメン好きの間でも明確に好みが分かれる部分だと思います。しかし、ラーメンのバリエーションには更に「ストレート」「縮れ」という形状のバリエーションもあることは見逃せません。先に述べた太さのバリエーションと形状のバリエーションを組み合わせると、膨大な麺のバリエーションが考えられるわけです(実は使用する小麦の種類や卵などの追加素材も併せて考慮すると、生み出される麺の可能性は無限大なのですが、そこまでテーマを広げてしまうと1ブログ記事で扱える範疇を超えてしまいますので、今回は敢えて形状のバリエーションのみをフォーカスしたいと思います。その点はご容赦ください)。
ラーメンでストレート麺と縮れ麺のどちらを使用するかを決定する際に大切なポイントは「スープと麺の絡み」です。このことが麺の形状とスープとの相性を検討するうえで非常に重要なファクターとなります。世間では縮れ麺の方が(その形状から)よくスープが絡むと思われていますが、実際にはストレート麺の方がスープが絡みやすいという実験結果があります。その理由としては、麺を箸で持ち上げた時の、麺同士の隙間が挙げられています。ストレート麺においては麺を持ち上げた時に隙間がほとんどできないのに対し、縮れ麺では多くの隙間ができます。そして隙間のできないストレート麺の方が、毛細管現象によって多くのスープを絡みつかせることができるという仕組みです。また、麺の太さもスープの絡みやすさに大きく影響を与えると言われており、太麺よりも細麺の方がよりスープを絡めるようです。よって博多ラーメンで採用されている「細麺」かつ「ストレート麺」は、豚骨スープを味わい尽くす上では最適な麺の形状です。
これらを考慮して、縮れ麺と相性の良いスープがどういったものなのかを考えてみましょう。縮れ麺はストレート麺に比べてあまりスープが絡まないので、濃厚な味わいのスープのラーメンに向いているといわれています。もし濃厚なスープに細いストレート麺を採用したとしたら、スープのインパクトに麺が負けてスープの味がきつく感じてしまうかもしれません。味噌ラーメンなど味付けが濃いスープを使用しているラーメンで縮れ麺がよく採用されているのは、このような理由が考えられます。
少し話がずれますが、スープの絡みやすさを考えるうえで検討すべきもう一つの要素として、麺の「加水率」が挙げられます。これは、麺生地を生成する際に使用する小麦粉の総重量を100%としたときの小麦粉に対する水の分量です。ラーメンにおいては35%程度が一般的だと言われており、これより多くの水を使用している麺は「多加水麺」、使用している水が少ない場合は「低加水麺」と言われています。そしてスープの絡みやすさにおいては、低加水麺の方がスープを吸収しやすく絡みやすいと言われています(博多ラーメンで使用される麺は低加水麺なので、この点においてもスープが非常に絡みやすい麺を採用していることになります)。対して、縮れ麺は一般的に多加水麺であることが多く(低加水麺では後述の縮れを加える工程で麺が折れやすくなるため)その点においてもスープが絡みにくい仕様となっています。縮れ麺を使用したラーメンには、スープが絡まない状況でも味のインパクトを与えることのできる濃厚なスープを合わせていく必要がありそうです。ただし、スープが絡みづらいという事実は、縮れ麺があっさり味のスープと合わない、ということを必ずしも意味しません。低加水麺に比べ、スープが絡みづらい多加水麺ですが、実は同時にツルツルとしたのどごしと、モチモチとした食感を特徴としています。(参考までに、一般的な手打ちうどんの加水率は50%前後と言われています。うどんを一度でも食したことのある方であれば、加水率が高くなればモチモチ感が強まるという事実に対して、合点がいく部分も多いのではないでしょうか)。さらに縮れ麺であれば、その形状がもたらす独特の食感も伴うことになるので、その特性を前面に押し出したうえであっさり味のスープと合わせることも十分に検討できます。こうした様々な要素を念頭に置きながら、最終的にはラーメンを作る料理人に縮れ麺とスープの選択がゆだねられることとなります(その結果、濃厚なスープではなくあっさりとしたスープのラーメンに縮れ麺が合わせられている事例も数多くあります)。
結局、縮れ麺とスープの相性に関しては唯一無二の最適解があるわけではないというのが正直なところですが、縮れ麺の特性を理解することは少なくとも自分好みの麺とスープのコンビネーションを探し当てるうえで一つの指針になるのではないかと思います。今後もし麺を選べるラーメン屋で注文する機会がある際は、ここでお話したことを少し思い出して注文してみてはいかがでしょうか。
■麺を縮れされるにはどうすればよいか?

ここまで縮れ麺とスープの相性について語ってきたところで、次に実際に麺を縮れさせるためにはどうすればよいかを説明したいと思います。麺を縮れさせるには大きく分けて「麺の製造工程で機械的に圧力をかける」方式と、「手でもむ」方式があります。実はストレート麺と縮れ麺の製造工程は麺生地の生成などの途中工程は全く同じで、異なるのは最後の麺の切り出し時のみとなります。
機械的に圧力をかける方式では、切刃の出口にゴムの板を貼って意図的に切り出し口に抵抗を与えることで麺を縮れさせます。以下の動画の9:55あたりをご覧いただければ、どのように製麺機が縮れを与えているかご理解いただけるかと思います。
もう一つの方法は、通常のストレート麺の製造工程を経て一人前の麺玉が出来上がったのちに、自分の手でもむという方法です。具体的にどのように麺がもまれているかは以下の動画の3:00あたりから見ていただけるとイメージがわきやすいかと思います。
このように麺を縮れされるには大きく二つの方法があるのですが、機械的に圧力をかける方式では縮れに規則性のある麺を生成するのに対し、手もみで縮れを与える場合はその縮れ方が人の手で行われているためランダムで、独特の食感を与える点が特徴です。どちらを採用するかはスープとの相性を考えて最適な組み合わせを検討する必要がありますが、日本のラーメン店では家庭では再現しづらいひと手間かかった「手もみ麺」を提供していることをウリにしている店も多く、それを目当てにラーメン店に足を運ぶラーメンファンも少なくありません。
ちなみにカップヌードルなど多くのインスタントヌードルの麺もまた縮れ麺が採用されていますが、こちらは少し違った事情があります。インスタントラーメンの麺を製造する際には油で揚げるという工程を取ることが多いのですが、その際にストレート麺だと一度にたくさん揚げた際に密集して麺同士がくっつき、麺全体がうまく揚がらないという問題に、当時チキンラーメンを開発中の安藤百福は悩まされていました。そこで彼はその問題を解決するべく、麺同士の隙間を作るために麺を縮れさせ、均等に揚げることに成功したのです。このことが、今でも多くのインスタントラーメンで縮れ麺が採用されている理由だと言えます。
■縮れ麺が採用されているご当地ラーメン
日本全国には地方の食材を使用したり、地方独特の文化に根差したご当地ラーメンが数多く存在することは、以前の記事(あなたはいくつ知ってますか?奥深いご当地ラーメンの世界)でも触れました。そんな中でも、特に「縮れ麺」を採用していることで有名なご当地ラーメンをいくつかご紹介したいと思います。
・札幌ラーメン

日本初の味噌ラーメンとして名高い札幌ラーメンですが、そこで採用されている「中太縮れ麺」も他のラーメンと一線を画する麺として多くのラーメンファンから認知されています。札幌ラーメンで縮れ麺が採用された理由は、麺を箸で持ちやすくするためだったと言われています。札幌がある北海道は、日本最北端に存在するため寒さが厳しいことで有名です。そんな環境下で当時一日中力仕事に従事していた労働者が、夜にラーメンを食べようとしても手に力が入らず、うまく箸でラーメンがすすれない、という状況があったようです。そこでそんな彼らにも食べやすいラーメンを提供したいということで縮れ麺が採用された、というわけです。また、札幌ラーメンは独特の黄色い麺を採用していることでも有名です。これは卵に由来するもので、当時、味噌ラーメンの創始者である大宮守人氏と西山製麺の創業者である西山孝之氏の間で、麺の色を食欲のそそるものにするために話し合った結果、考案されたもののようです。
・喜多方ラーメン

蔵の街でお馴染みの福島県喜多方市で食べられる喜多方ラーメンは、日本では非常に知名度の高いラーメンです。この喜多方ラーメンで採用されている麺は平打ちの縮れ麺で、多加水麺であるため、その独特なコシが特徴です。この地で得られる山の雪解け水が非常に良質なため、水を多く利用した多加水麺の製法が定着したのもうなずけます。また、先ほど喜多方市を「蔵の街」と紹介しましたが、これは醸造蔵を必要とする醤油、味噌、清酒の醸造業がこの地で盛んであることを意味します。こうした醸造業が発展するためにも、質の高い水が必要なのです。喜多方ラーメンのスープベースが醤油味であることを考えると、喜多方ラーメンはその地の水という自然の恵みがもたらした奇跡の一杯だということもできます。ちなみに俗にいう日本三大ラーメンとは「博多ラーメン」「札幌ラーメン」「喜多方ラーメン」を指すのですが、そのうち二つが縮れ麺を採用しているというのは興味深い事実です。
・白河ラーメン

東北の玄関口である福島県白河市は、白河ラーメンを提供するラーメンどころとしても知られています。そこで使用されている麺は幅の広い多加水縮れ麺で、その縮れ度は先に紹介した喜多方ラーメンを上回っていると言われています。福島では江戸時代から飢饉対策で冷害に強い蕎麦作りが奨励されていたため、そば打ちの技法が発展しました。その技法が白河ラーメンの麺作りにも応用されています。具体的には木の棒で麺を打ち、包丁で麺を切り出し、手でもんで麺を縮れさせる手法が採用されています。余談ですが、白河ラーメンの創業者である竹井寅次氏が修行していた屋台ではワンタンを提供していたことから、白河ラーメンを提供する地元のお店ではワンタン麺も味わえることが多いようです。
・釧路ラーメン
最後にご紹介したいのが、札幌ラーメン、函館ラーメン、旭川ラーメンと並ぶ北海道四大ラーメンとして近年脚光を浴びている釧路ラーメンです。味噌味の札幌ラーメン、塩味の函館ラーメン、醤油味の旭川ラーメンと比較して釧路ラーメンが持つ最大の特徴は、ずばり「縮れ麺」です。ただし、これまで紹介した縮れ麺を採用しているご当地ラーメンが比較的太めの麺を採用しているのに対し、釧路ラーメンで採用されている縮れ麺は細麺であるところに最大の特徴があります。これは、北洋漁業が盛んな釧路で生まれたラーメンということもあり、北洋漁業に従事しているせっかちな漁師に素早くラーメンを提供するために茹で時間が短縮できる細麺が採用されたとする説や、釧路ラーメンのスープがあっさりしたかつおだしであったため、それに合う麺として細麺が採用されたとする説もあります。
■結論
今回はラーメンで使用されている縮れ麺にまつわる様々な興味深い情報を取り上げてみました。いかがだったでしょうか?麺の形状一つとっても、それが最終的なラーメンの味わいを左右する重要なファクターになっていることがわかっていただけたのではないかと思います。なお巷では豚骨ラーメンはストレート麺、味噌ラーメンは縮れ麺、など一定の型があるように思われていますが、これはあくまでこれまでの経験則やご当地ラーメンの背景にある歴史から導き出された現在の最適解というだけで、この型に皆様が縛られる必要はないかと思います。本日の記事で述べた麺の形状とそれがもたらすスープとの相性を念頭に置きながら、自分自身が納得できる究極のコンビネーションを追求してみても良いのではないでしょうか。また次回ラーメン屋に行った際には、ぜひ注文したラーメンの麺の形状にも注目してみてください。それはきっとスープとの相性を考えて店主が選び抜いたこだわりの結果であるはずです。そう思いながらラーメンを食べることで、これまでと一味違った感想を持たれるかもしれません。
本日の記事は以上となります。また次回、ラーメン好きの方があっと驚くようなテーマを用意して待っていますので、ぜひ楽しみにしていてください!
Reference links:
【プロが解説】ラーメンの「麺」の「種類」を紹介するよ! – YouTube
ストレート麺とちぢれ麺の違いとは|習志野市で製麺所をお探しなら早川製麺
麺とスープのベストな相性!〜醤油・塩・味噌・豚骨編〜 | 1玉45円からの製麺所
ラーメン「麺の種類」の基礎知識。麺の太さ・形状・作り方・使い方を徹底解説 | 全国ご当地ラーメンの歴史
ラーメンで一番スープが絡みやすい麺って何ですか?細麺?太麺?ちぢれ麺?他にもっと絡むってのはありますか? – Quora
即席めん に4つの秘密 | 知識の宝庫!目がテン!ライブラリー
知らなかった?わくわくさせる札幌ラーメンSTORY! – 北海道Likers
札幌ラーメンの麺の特徴とは?ちぢれ麺/卵麺の起源と歴史を紹介! | 株式会社GRAST
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