ラーメンに詳しい方であれば、その種類が大きく分けて「豚骨」「醤油」「味噌」「塩」とスープの味によって大別されることはご存じかと思います。しかし日本ではそうした味でのカテゴリー分けとは別に、日本国内の地域によってラーメンの種類が区別される「ご当地ラーメン」というカテゴリーが存在します。それはあたかも同じピザでもニューヨークのピザ(Thin Crust Pizza)とシカゴのピザ(Deep Dish Pizza)に大きなスタイルの違いがあるように、日本のラーメンも提供される地域の食材や嗜好性に合わせて変化した様々なスタイルが存在しているのです。その種類はおそらく日本人でもすべてを把握することは難しいほど多様ですが、もしあなたがラーメンファンでこれからラーメンの奥深さを追求しようとしているのであれば、ご当地ラーメンへの探求は避けて通れないものとなるでしょう。今回はそんなご当地ラーメンを楽しく味わうための道しるべとなるような情報を集めました。あなたのラーメン探求に少しでもお役立ていただければ幸いです。
- 目次
■「ご当地ラーメン」がどのように生まれたか?
冒頭でもお伝えしたとおり、料理はそれが食されている地域の特徴を色濃く反映して新たなバリエーションを生み出す傾向が強いように思います。料理に変化をもたらす要因としては、その地域で獲れる独特の食材であったり、気候やそれに起因する地域住民の味覚の傾向などが考えられます。日本のラーメンもご多分に漏れずそうした影響を多く受け、数々のユニークなご当地ラーメンが各地で誕生しました。ただしご当地ラーメンが発生するためには、まずベースとなるラーメンが日本の各地に伝播している必要があります。今日の日本のラーメンのルーツは、20世紀前半に横浜や神戸、長崎など日本の港町に進出した中国人が提供していた麺料理をベースにして東京で生み出されたものですが、これらが日本全国に伝播したきっかけの一つは1923年に発生した関東大震災と言われています。この震災により東京周辺で住居を失った中国人が地方の中小都市に移り支那料理店を開くケースが増えました。彼らが地方で提供を始めたラーメンが、地元の特色を反映してそれぞれの進化を遂げたものが今日ご当地ラーメンと呼ばれるものになっていったと考えられそうです。このような経緯を経て誕生した各地のご当地ラーメンは、今日では郷土食として地域の人に親しまれています。
このように各地域でご当地ラーメンが誕生してからはそれなりの年月を経ているのですが、実は日本人が全国各地にそのようなユニークなご当地ラーメンが存在しているということに気付いたのは、実はそんなに昔の話ではないのです。おそらく日本で初めて全国区的にご当地ラーメンの存在を知らしめたきっかけとなったのは、北海道生まれの札幌ラーメンだったと思います。これまで醤油ベースのスープがラーメンの定番と考えていた日本人にとって味噌スープの札幌ラーメンは衝撃的だったようで、瞬く間に評判となります。更に雑誌で取り上げられたことやインスタントラーメンの「サッポロ一番」が味噌味を全国的に展開したこともあり、札幌ラーメンという一地方のラーメンが全国的にブランドを確立したのです。これ以降は東京方面にも「札幌ラーメン」の看板を掲げた店が増えるようになりました。これが1960年代後半のことでした。
現在ではアメリカでも知名度の高い豚骨ラーメンも、元をたどれば九州地方で誕生したローカルラーメンの一種でした。こちらが日本全国で大きな知名度を得たきっかけもインスタントラーメンでした。豚骨味のインスタントラーメン「うまかっちゃん」が、当初九州限定で大ヒットし、のちに全国展開したことが豚骨ラーメンブームの契機になったと考えられます。ちなみに「うまかっちゃん」の発売は1979年なので、この時点で札幌ラーメンの全国ブームから10年ほど経っていることになります。ただし、本格的な豚骨ラーメン店の東京進出とそれに伴う豚骨ラーメンブームの発生には更にそこから10年ほど時間を要することになります。現在はアメリカでも人気を博している博多ラーメンの一風堂も、一号店を福岡に構えたのが1985年ですが東京に店舗をオープンさせたのは1995年と実は結構最近のことなのです。このように札幌ラーメンよりも時間はかかったのですが、さながら豚骨スープの仕込みに時間をかけるように最終的には豚骨ラーメンも全国的な知名度を獲得するに至りました。
札幌ラーメンや豚骨ラーメンなど、日本各地で生まれたユニークな味わいのラーメンを発見した日本人は次第にこのように考えるようになります。「ほかの地方にもユニークでおいしいラーメンがあるんじゃないか?」と。その予感は的中しました。この後で詳しく紹介しますが、全国各地でその地域の人のみに愛されているバラエティ豊かなご当地ラーメンが数々発掘されたのです。それはあたかも数々のラーメンブームで盛り上がっている日本人がご当地ラーメンという更なる金脈を掘り当てたかのようでした。これがおよそ1990年代後半ごろの出来事だったと思います。こうしてこれまでは地元で小規模に消費されていたご当地ラーメンが次々と全国的な脚光を浴びるようになり、今日に至っています。
■アメリカで食べられる「ご当地ラーメン」
前章で述べた通り、関東大震災を契機に地方に伝播したラーメンは、各地でその地方の特徴と結びついて数々のご当地ラーメンとなり、地元の熱い支持を受け今日まで受け継がれています。その数は代表的なものだけでも50種類を超えるといわれ、熱心なラーメンマニアによるまだ脚光を浴びていないご当地ラーメンの発掘や、地方で生まれる新たなご当地ラーメン創作の動きなども考えると、今後もこの数は増していくのではないかと考えられます。
参考までに以下にご当地ラーメンを紹介しているウェブサイトをご紹介します。こちらで掲載されている「ご当地ラーメンマップ」は圧巻です。日本国内に多様なご当地ラーメンがひしめき合っている様子を見て圧倒されてしまう方もいるかもしれません。
Ramen Map in Japan – TABERUKOTO
各地で誕生した多様なご当地ラーメンは全体像を把握するのに一苦労ですが、まずは食材に注目して以下のように大きく分けるとわかりやすいかもしれません。以下に一例を挙げます。
麺に特徴があるケース
- 十文字ラーメン
秋田県横手市のラーメン。無かん水麺を使用している
- 竹岡式ラーメン
千葉県内房発祥のラーメン。乾麺を使用している。
スープに特徴があるケース
- 長岡系ラーメン
新潟県長岡市のラーメン。スープに生姜を用いている。
- 鳥取牛骨ラーメン
鳥取県のラーメン。牛骨からダシを取っている。
具材に特徴があるケース
- 大船渡さんまラーメン
岩手県大船渡市のラーメン。地元でとれるサンマを使用している。 - とりもつラーメン
山形県新庄市のラーメン。鶏のもつ煮込みを使用している。
ただこの方法だけではとても全てのご当地ラーメンの魅力を紹介し尽くすことはできません。そこで今回は「ご当地ラーメンには興味があるけど、何から試してみたらよいかわからない」という方のために、まずはアメリカですでに進出を果たしているご当地ラーメンや、スーパーマーケットで比較的手に入りやすいご当地ラーメンを紹介したいと思います(やはりラーメンの魅力をわかっていただくためには、実際に食べていただくのが一番ですよね?)。ぜひ次回ラーメンを食べるときの参考にしてみてください。
北海道エリア
- 札幌ラーメン
日本最北の地である北海道で生まれ、ご当地ラーメンブームのきっかけを作った札幌ラーメンの紹介を抜きにしては、当記事は成り立ちません。前述のとおり、札幌ラーメンの特徴は味噌ベースのスープにありますが、味噌ラーメンが考案されたのは1954年で、それ以前は札幌でも醤油ラーメンが主として提供されていたようです。その他の特徴としては、黄色くモチっとした中太縮れ麺を用いることが挙げられます。具材は定番のチャーシュー、メンマ、ネギなどの他に、タマネギ、キャベツ、モヤシなどの炒めた野菜を載せることが多いようです。観光客向けに地域色を出すために、北海道をイメージさせる具材としてバターやコーンのトッピングを用いるケースもありますが、地元ではメジャーなものではないようです。
アメリカで札幌ラーメンが食べられるお店
TOMIZO RAMEN自宅で札幌ラーメンを再現するには
SIGNATURE MISO RAMENをベースに、タマネギ、キャベツ、モヤシなどの炒めた野菜をトッピングとして加えれば、ご家庭でも手軽に札幌ラーメンが味わえます。
東北エリア
- 喜多方ラーメン
喜多方市は、福島県会津地方の北部に位置します。あまり馴染みのない地名かもしれませんが、この地で誕生した喜多方ラーメンは、実は日本三大ラーメンの一つとして数えられているのはご存じでしょうか?(ちなみに残りの2つは前述の札幌ラーメンと博多ラーメンです)。1930年代ごろから喜多方市ではラーメンが浸透し始め、一時期は対人口比のラーメン店舗数では日本一であったほどラーメンが人気な地域でしたが、ここで提供されるラーメンが全国的な知名度を獲得するには至りませんでした。ところが1980年代に喜多方市が「蔵の街」として観光客を集めるようになると、それに伴いその独特なスタイルのラーメンが全国的に知られるようになりました。スープはあっさりとした醤油ベースで、コシのある独特の縮れを持った平打ち麺が特徴です。
アメリカで喜多方ラーメンが食べられるお店
KITAKATA RAMEN BAN NAI
関東エリア
- 八王子ラーメン
八王子市は、東京都西部に位置する市です。この地で独自に生み出された、刻み玉ねぎをトッピングに用いたラーメンが八王子ラーメンと称されています。当初地元民は刻み玉ねぎが入ったラーメンがオリジナリティの高いものとは認識していなかったのですが、1990年代に各地のご当地ラーメンに注目が集まるようになると、彼らはこれを街おこしに使わない手はないと考えました。現在では積極的なPR活動により、八王子ラーメンは徐々に知名度を上げています。特徴は醤油ベースのスープ、油脂をスープに浮かせること、そして刻み玉ねぎを用いることとなってます。
アメリカで八王子ラーメンが食べられるお店
HACHIOJI CRAFT RAMEN
- 横浜家系ラーメン
横浜は東京の南にある日本の都市で、外国貿易のために日本で最初に開かれた港のひとつのため、外国の文化が流入しやすい地域となっています。そんな横浜で生まれた家系ラーメンは、創業者の吉村実が1974年に横浜市で「吉村家」というラーメン屋を開店したことに始まります。彼は独自に醤油と豚骨を掛け合わせたラーメンスープを開発することを思い立ち、それが家系ラーメンの味の特徴となっています。ちなみに家系ラーメンという名前は、吉村家から暖簾分けおよび派生したラーメン店が「〜家」という屋号を用いることが多かったため、同様の特徴を持つラーメンを提供するラーメン屋を総称する呼び方として自然発生したとされています。その他の特徴としては、太麺を用いることと鶏油を仕上げに用いること、トッピングにほうれん草を使用することが挙げられます。
アメリカで横浜家系ラーメンが食べられるお店
E.A.K RAMEN
中部エリア
- 台湾ラーメン
名前に「台湾」と含まれていますが、発祥は愛知県名古屋市となっています。台湾料理店「味仙」の店主である郭明優が1970年代に考案した賄い料理が起源とされています。台湾人の店主が考案したことから「台湾ラーメン 」と名付けられ、店でメニューとして提供されるようにもなりました。豚挽き肉、ニラ、長ねぎ、モヤシなどをトウガラシで炒め、醤油ベースのスープを加えて茹でた麺にかけたラーメンで、辛い味付けとニンニクがたくさん入れられている点が特徴です。
アメリカで台湾ラーメンが食べられるお店
RAMEN SHINCHAN
- 台湾まぜそば
上記の台湾ラーメンを作る過程で派生的に生まれたのが汁なし麺の台湾まぜそばです。こちらも発祥は愛知県名古屋市となっており、名古屋に本店を持つ「麺屋はなび」の店主が試行錯誤の末現在の台湾まぜそばが完成しました。誕生は2008年なので比較的新しいご当地ラーメンです。特徴は極太麺とその上に載せた鷹の爪とニンニクを効かせた醤油味のひき肉そぼろです。さらに生の刻んだニラ、ネギ、魚粉、卵黄、おろしニンニクを載せ、これらをよくかき混ぜて食べます。麺を食べ終わったのちに白めしを投入して、どんぶりに残ったそぼろやタレと混ぜて食べるサービスもあります。
アメリカで台湾まぜそばが食べられるお店
MENYA HANABI*台湾まぜそばの発祥となった店がアメリカに進出しました。
近畿エリア
- 和歌山ラーメン
和歌山県は日本の近畿地方に位置する県で、この地でも独特のご当地ラーメンである「和歌山ラーメン」が誕生しました。そのスープは一般的には豚骨醤油味であり、シンプルな見た目に反した奥深い味わいは日本全国のラーメンファンを引き付け、週末には地元の有名店では行列ができるほどです。また、新横浜ラーメン博物館に出店経験があることや、あるテレビ番組でのラーメンコンテストで優勝経験を持つことから、日本でのご当地ラーメンブームの火付け役ともいわれています。そうしたこともあり日本では首都圏を中心に人気が広がったため、現在では和歌山まで出かけなくても都心でも和歌山ラーメンを提供する店を見つけることができます。日本に訪れた際はまずはそちらから試してみてもよいでしょう。
アメリカで和歌山ラーメンが食べられるお店
GOMEN RAMEN
四国エリア
- 徳島ラーメン
徳島県は四国(日本列島の主要4島のうち最も小さな島。ちなみに他の3島は北海道、本州、九州)の東部に位置する県です。徳島でユニークなご当地ラーメンが生まれた背景には、この地に日本ハムの前身である徳島ハムの工場があり、安い豚骨が大量に供給されたからといわれています。この地では様々なスタイルのラーメンとそれらを提供するラーメン店が生まれたのですが、そうしたラーメン店の一つ「いのたに」が1998年に新横浜ラーメン博物館に全国のご当地ラーメンの一つとして徳島ラーメンを出店したことで、彼らが提供するスタイルのラーメンが徳島ラーメンとして全国的に認知されることとなりました。それは豚骨スープに濃口醤油やたまり醤油で味付けした、黒っぽい濃茶色のスープのラーメンで、スープの味が濃くやや強めの甘味があるのが特徴です。トッピングには薄切りの豚バラ肉を醤油や砂糖、みりん、酒で甘辛く煮付けたものが用いられ、同時に生卵もトッピングされることからすき焼きを連想する方も多いようです。
アメリカで徳島ラーメンが食べられるお店
MEN OH RAMEN
九州・沖縄エリア
- 博多ラーメン
博多は九州北部に位置する福岡県福岡市の地域の名称です。一風堂の活躍もあり、アメリカでは今や豚骨ラーメンの代名詞となった感のある博多ラーメンですが、あくまでも数多く存在する豚骨ラーメンの一バリエーションととらえるのが良いと思います。博多ラーメンの発祥も諸説あるのですが、同じ福岡県に位置する久留米市で1937年に「長崎ちゃんぽんの豚骨ベースのスープ」を元に誕生した久留米ラーメンをルーツに持つという説が有力です。その他の特徴としては白っぽい極細のストレート麺が挙げられます。この麺はスープを吸いやすい分のびやすいため、一回の分量を少なめに提供することが多いです。この分量で物足りない人は「替え玉」というシステムを用いることも可能です。これは麺を食べ終わったのちに麺を追加注文できる方法です。麺に関しては、注文時に希望する麺の硬さを聞かれることも博多ラーメンの特徴になっています。
アメリカで博多ラーメンが食べられるお店
IPPUDO US
HAKATA IKKOUSHA自宅で博多ラーメンを再現するには
PREMIUM SHIO TONKOTSU RAMENをベースに自宅で博多ラーメンを再現してみましょう。ネギ、チャーシュー、ごま、紅ショウガなどのトッピングが準備できれば、本格的な博多ラーメンが完成したも同然です。ワンランク上を目指すのであれば、更に辛子高菜も用意してみましょう。 - 熊本ラーメン
熊本は、九州地方に位置する県です。熊本ラーメンのルーツもまた前述の久留米ラーメンに端を発します。1952年に久留米ラーメンを提供する「三九」が熊本県玉名市に出店した際に、その味に感銘を受けた者たちによって熊本市内で創業されたいくつかのラーメン屋が提供していたラーメンが熊本ラーメンのルーツとされています。その中でも特にいち早く関東進出を果たした「桂花」がその看板に「熊本ラーメン」と掲げたことで、熊本ラーメンという呼称が全国に広まるきっかけとなりました。久留米ラーメンの影響を受けているので豚骨スープがベースになっているものの、更に鶏ガラも加えている点が熊本ラーメンの特徴となってます。揚げたにんにくチップやマー油を用いる点も他のラーメンには見られない特徴です。麺は博多ラーメンとは異なり、中太のストレート麺が用いられます。
アメリカで熊本ラーメンが食べられるお店
RAMEN KUMAMOTO
TERAKAWA RAMEN
- 長崎ちゃんぽん
長崎は日本の九州地方に位置する県で長崎市はその県庁所在地です。長崎ちゃんぽんはこの地で生まれました。明治32年に長崎で開業した中華料理店「四海楼」の創業者である陳平順が、長崎で学んでいた貧しい中国人留学生に安くて栄養のあるものを提供するために、福健料理の「湯肉絲麺」をベースに地元で獲れる野菜や魚介を用いて生み出したメニューが長崎ちゃんぽんの発祥と言われています(詳しくは以前のエントリー”異国情緒が漂う長崎を代表するご当地ラーメン、「ちゃんぽん」とは?”を参照ください)。鶏ガラや豚骨等で取ったスープは白濁しており、栄養面を考えて考案されているせいか野菜や魚介(新鮮な魚、エビ、イカ、貝類、カマボコ、キャベツ、葱、もやしなど)十数種類の食材が具材としてふんだんに使われている点も特徴です。ちゃんぽんに使用される麺は太くコシのあるもので、茹でるのではなく前述のスープと一緒に煮込む点も、他のラーメンにはない大きな特徴となっています。
自宅で長崎ちゃんぽんを再現するには
まずは長崎ちゃんぽんのトッピングに必要な各種具材を可能な限り用意してみましょう。そこさえクリアできれば後は簡単。中華鍋で用意した具材を炒め、そこにNAGASAKI CHAMPONのスープを注ぎ、最後に麺を入れて煮込めば、あっという間に本格的な長崎ちゃんぽんの出来上がりです。お鍋一つで手軽に調理できる点もポイントです。長崎ちゃんぽんのレシピはこちら
- 鹿児島ラーメン
九州の最南に位置する鹿児島県でも、他では見られないユニークなご当地ラーメンが生まれました。ただし、他のご当地ラーメンとは異なり各店舗の独自性が強いため、鹿児島ラーメン総体としての特徴はないと言われています。強いてあげるとすれば、豚骨をメインに鶏ガラや野菜を加えた半濁のスープと、麺はかん水が控えられた白っぽい中太ストレート麺が使われていることが特徴となります。スープベースに豚骨は使用されているものの、九州各県のご当地ラーメンが「博多ラーメン」「熊本ラーメン」の項で述べた久留米ラーメンの影響を強く受けているのに対して、鹿児島ラーメンは九州で唯一久留米ラーメンの影響を受けておらず、古くから豚肉を食する沖縄からの影響もあったことから独自の経路で豚骨スープを採用するに至っています。よって、鹿児島ラーメンは久留米ラーメンとは異なる発祥の豚骨スープラーメンとされています。
アメリカで鹿児島ラーメンが食べられるお店
MENYA JIRO
ZABON RAMEN BAR
- 沖縄そば
日本本土から遠く離れた最南端県である沖縄県でも「沖縄そば」と呼ばれるご当地ラーメンが生まれていました。ただそのルーツは日本本土のラーメンとはやや異なり、450~500年前の琉球王国(15世紀から19世紀までかつて沖縄を中心に存在していた王国)において当時交易が盛んだった中国から伝わった麺食文化であると考えられています(詳しくは以前のエントリー“日本のローカル麺の一つ、「沖縄そば」の謎に迫る!”を参照ください)。そのスープは基本的には豚骨とかつお節をベースにしています。代表的な具材は、三枚肉(皮付き豚のバラ肉を砂糖醤油でじっくり煮込んだもの、紅ショウガ、かまぼこ、島ねぎ(Scallionの一種)になりますが、提供される地域によって様々なバリエーションが存在します。更に特徴的なのは麺で、その製造時に通常であればかん水を使用するところ、樹木を燃やした灰の上澄み液(灰汁)を代わりに使用する点が他のラーメンと大きく異なっています。また、保存性を高めるために麺を茹でた後に油をまぶす点も特徴的で、このことが沖縄そば独特の食感を生んでいます。
アメリカで沖縄そばが食べられるお店
IZAKAYA HABUYA OKINAWAN DININGアメリカで沖縄そばを再現するには
沖縄そばを自宅で再現する際には豚の三枚肉は非常に重要な役割を果たしますので、ぜひ頑張ってご用意ください。こちらはチャーシューで代用することも可能です。その際はぜひこちらのレシピをご参照ください。また紅ショウガも口の中をさっぱりさせるいいアクセントとなりますので、こちらもできれば揃えたいところです。あとは、こちらのOKINAWA SOBAのパッケージに記載されている指示に従って作れば、ご自宅で本格的な沖縄そばが再現できます。沖縄そばのレシピはこちら
■来日時にぜひトライしてほしいご当地ラーメン
ここまでで紹介したように、アメリカにはいくつかのご当地ラーメンが既に上陸しているのですが、残念ながらこれらは日本国内に数多く存在するご当地ラーメンの氷山の一角にすぎません。これ以外にも日本には皆様に味わっていただきたいご当地ラーメンが数多く存在するのですが、その全てをこの記事で網羅することは非常に困難ですので、今回はその中でも特に特徴的なご当地ラーメンを選りすぐってご紹介します。どれもアメリカでは口にする機会はないレアなラーメンになりますので、日本に訪れた際はぜひお試しください。
- 燕三条系ラーメン
燕三条系ラーメンはその名に含まれている通り、新潟県燕市発祥のラーメンです(新潟県は日本海に面した本州の中北部に位置する県です)。洋食器産業で有名なこの町の労働者の要望に応え、濃いめの味付けになっている点が特徴で、更に出前しても麺が伸びにくいように極太麺が使用されています。しかし、その最も大きな特徴は麺の上に振りかけられた大量の豚の背脂です。こちらも出前時にスープが冷めないための工夫から生まれたもののようです。さながら雪のように麺の上に降り積もる大量の背脂を見たら、そのインパクトにきっと驚かれることでしょう。豚骨ラーメンとは異なる味わいのこってり味のラーメンにチャレンジしたい方には、ぜひお薦めします。
- 山形冷やしラーメン
「ラーメンはおいしいけれど、夏の暑い日に食べるのはどうも、、、」と考えたことはありませんか?同じようなことを考えた常連客の要望に応え開発されたのが、山形県名物の「冷やしラーメン」です(山形県は日本の東北地方南西部に位置する県です)。ラーメンに詳しい方であれば、すでに冷やし中華の存在はご存じかと思いますが、この冷やしラーメンは冷やし中華とは異なります。まず酸味の強いスープを用いる冷やし中華に対して、冷やしラーメンのスープの酸味は強くありません。また、冷やしラーメンの場合は通常のラーメンと同様にたっぷりのスープの中に麺を浸す形で提供されます(そのスープは醤油味であることが一般的です)。なお、冷やしラーメンを作るうえで一番のポイントは、冷たいスープでも脂が固まらないように仕上げなくてはいけない点です。ちなみに場所によってはスープに氷を浮かべて冷やしラーメンが提供されるケースもあるようです。もしあなたが夏に日本に訪れる機会があれば、炎天下でもさっぱりと食べられる冷やしラーメンをぜひお試しください。
■最後に
今回は、日本に数多く存在するご当地ラーメンについて、様々な角度から紹介をしてみました。今回紹介した情報をもとに、まずは自分のお気に入りのラーメンがどのご当地ラーメンに該当するのかを確認してみてはいかがでしょうか?また、当記事執筆時点で予想していた以上に多くのご当地ラーメンが既にアメリカ上陸を果たしているのには驚きましたが、日本にはまだまだ多くのご当地ラーメンがあなたに発見されることを待っています。そうしたご当地ラーメンの中に、ひょっとしたら近い将来一風堂の博多ラーメンのようにアメリカで新たなブームを起こすものがあらわれる可能性があります。それがどこのご当地ラーメンなのか、予想してみるのも楽しいかもしれません。何はともあれ、今回の情報があなた好みのラーメンを探す手助けになれば幸いです。
参考:
【全国ご当地ラーメン一覧】歴史・特徴やリアルな感想一覧 | 俺たちのラーメン(俺ラー)
【ご当地ラーメンマップ】全国のご当地ラーメン特集
今さら聞けない!? 日本三大ラーメンってどこのラーメン? その魅力や特徴に迫ります
The Ultimate Guide to Ramen: Around Japan in 16 Types
Gotochi Ramen: Best Japanese Regional Ramen
「記憶に残る10杯のラーメン」で平成の麺シーンを振り返る | Rettyグルメニュース
日本のラーメンの歴史 – 新横浜ラーメン博物館
この1冊でラーメンのすべてがわかる!インスタントラーメン図鑑
Title: Ramen Map in Japan – TABERUKOTO