アメリカでラーメンブームが起きた理由

2022年3月15日 - この記事は4分で読めます

かつては世界的に代表的な日本食といえば「寿司・天ぷら・刺身」を連想するのが一般的でしたが、最近はこのベスト3の一角に確実にラーメンがランクインするようになっているようです。JNTO(国際観光振興機構)が2009年に行った調査では、訪日外国人が「特に満足した日本の食事」として、第1位の寿司に続きラーメンを第2位に挙げています。それ以降ラーメンは日本国外から熱い注目を浴び続けています。

ラーメンに対する注目度という点では、もちろんアメリカも例外ではありません。2000年代初頭からアメリカで始まったラーメンブームは今なお加熱中です。日々新しいラーメン屋が開店しその店頭にできた行列を見かけることも珍しいものではなくなってきました。ここまでくると、もはやラーメンは一過性のブームではなくすっかりアメリカの食文化に根付いたといえるかもしれません。

しかし21世紀にここまでラーメンが熱烈な支持を受けるとは、アメリカ人はもちろんラーメンの母国である日本でラーメンに慣れ親しんだ日本人ですら想定しえなかったことだと思います。そこで今回は2000年代初頭に突如発生した米国でのラーメンブームにスポットライトを当てて、その原因を紐解いていきたいと思います。

  • 目次

 

■インスタントラーメンのアメリカ上陸

ラーメン店でラーメンを外食することが一般的になる前、アメリカ人にとってラーメンとはインスタントラーメンのことを指しました。そのような認識が広まったきっかけは、1973年に日清食品のカップヌードルが果たしたアメリカ進出まで遡ります。カップヌードルは、日清食品の安藤百福がラーメンどんぶりを保有していることが一般的ではないアメリカでもラーメンが受け入れられるように容器に入れて販売することを前提として開発したもので、その手軽さから次第に全米で人気を博していきました。また、同時期に販売された同じ日清食品のTop Ramenやマルちゃんから発売されたインスタントラーメンも、アメリカにおけるラーメンという料理の知名度向上に大きく貢献したと考えられます。こうしてアメリカにおけるインスタントラーメンの米国普及は順当にスタートしたのですが、その安さと手軽さがもろ刃の剣となり、同時にラーメンという料理に対して「廉価なファーストフード」というイメージを植え付けることにもなってしまいました。
 

■米国ラーメンブーム前夜

21世紀になって本格化したアメリカのラーメンブームが起きる前から、実は日本式のラーメンを提供するラーメン店はアメリカで点在していましたが、その多くはアメリカで働いている日本人駐在員のニーズに応える形で経営されていたところが多かったと思われます。また、そうしたお店は現地の日本人が始めたお店であることも多く、このころ日本で人気を博した有名ラーメン店がアメリカで店舗を展開することは(一部例外はありますが)あまり見られない現象でした。そうした日本人駐在員向けのラーメン店にアメリカ人が足を運ぶことは今よりも一般的な光景ではなかったと思います。

こうした中、アメリカでも少しづつインスタントラーメン以外にレストランで提供される本格的なラーメンの存在が認識されるようになりました。まず最初のきっかけは、以前の記事(「これってマナー違反?」ラーメンを食べるときのマナーについて考えてみました)でもご紹介した、1985年に日本で製作された映画“Tampopo”です。この映画の中で、アメリカ人は日本のラーメン職人がひたむきにおいしいラーメン作りに打ち込む姿を目にし、「ラーメンとは料理人がその情熱を注ぎこむに足る料理である」という認識を次第に持つようになります。

マンガやアニメなどの影響も見逃せません。ラーメンブームに先行して「Naruto」など有名なアニメの中で、登場人物がおいしそうにお店でラーメンを食べている描写を多くの(特に若い)アメリカ人は目撃することになります。そうしていつしか「アニメで見たあのおいしそうな(インスタントラーメンとは異なる)ラーメンを自分も食べてみたい」という欲求が刷り込まれていったのです。
 

■“Momofuku”が火をつけた米国ラーメンブーム


Image by ©Simon Law,Flickr.com

このようにアメリカでラーメンに対する認識が少しづつ変化してきている時期に満を持して登場したのが、デイビッド・チャンが2004年ニューヨークに開店した「Momofuku Noodle Bar」です。デイビッド・チャンはMomofuku Noodle Barを開店する前に東京に滞在し、その当時日本を席巻していたラーメンブームを肌で感じました。彼が日本に滞在していた期間は、地方のラーメンにスポットが当たった「ご当地ラーメンブーム」がさらに発展し、職人自身のスープや麺へのこだわりがダイレクトに表現されたラーメンに注目が集まる「創作ラーメンブーム」に移行していた時期と重なります。おそらく日本での創作ラーメンブームを現地で経験したデイビッド・チャンは、職人がその創作的情熱をラーメンに傾ける姿を目の当たりにして、ラーメンという料理の可能性を直感したことと思います。このような経験をベースに独自のこだわりを持って提供されたMomofuku Noodle Barのラーメンは、アメリカですでに醸成されていた「本格的なラーメンを食べたい」という潜在欲求と化学反応を起こして、今日まで続くラーメンブームの着火点となったのです。彼が提供するラーメンは、これまでアメリカでラーメンに植え付けられていた「廉価なファーストフード」というイメージを払しょくすることに成功しました。個人的には、安藤百福がカップヌードルを開発してアメリカでのラーメン認知拡大に大きく貢献した後に、彼の名を冠して開店したMomofuku Noodle Barがアメリカでラーメンブームという形で開花させたという経緯は、歴史的必然を感じるようで非常に興味深いです。

その後、日本からも一風堂(2008年)や一蘭(2016年)がニューヨークに出店をして、ラーメンブームをけん引しました。どちらも豚骨ラーメンを提供するラーメン屋であることが共通点ですが、団体でゆっくり食事をするアメリカの外食慣行に合わせて一風堂がウェイティングバーを伴う「ラーメンダイニング」業態を選択したのに対し、一蘭が日本と同様に仕切り壁を導入している点は興味深い対比と言えます。このように、ラーメンの本場と目される日本からの人気ラーメン店の出店は、ニューヨークでのラーメンブームをさらに活性化することになりました。そこからは、主に都市部を中心に全米各地でラーメン店の出店が広がり、更に同時期に一般で利用が広がったブログやSNS上での情報拡散も手伝って、全米を巻き込んだラーメンブームが今日の盛り上がりを見せることとなったのです。
 

■ラーメンブームが今なお続いている理由

2004年のMomofuku Noodle Barの開店からこの記事を執筆している2022年に至るまで、ラーメンブームの勢いはとどまることを知りません。そこで前章まではブームが起こったきっかけについて考察してみましたが、ここからは視点を変えて今なおラーメンブームが継続している理由について考えてみたいと思います。

まず理由の一つ目として考えられるのが、ラーメンが持つ「Umami」という要素です。今や日本国外でもおなじみとなった「酸味」「甘味」「塩味」「苦味」以外に舌が感じることのできるこの第五の味は、英語で表現することが難しい感覚です。ただし一つ言えることは、「Umami」は人が料理をおいしいと感じるために重要な役割を果たす、ということです。このUmamiを体験するにあたって、ラーメンは格好の料理といえます。ラーメンのスープはいわばUmamiの宝庫であり、理想のUmamiを実現するためにラーメン職人が特に心血を注ぐ部分になっています。スープ作りに使用されるのは主に豚骨や鶏ガラなどの動物系素材やかつお節などの魚介系素材ですが、更に昆布や野菜など様々な素材も検討できます。それらの仕込みの方法やそれぞれの素材配分なども考慮していくとスープ作りの可能性は無限大にまで広がります。そうした可能性に没入する求道的なラーメン職人が、今なおラーメンファンを引き付けていることは疑いのないことだといえそうです。

次に理由としてあげられるのは、ラーメン店での食事がもたらすちょっとした異国体験です。日本同様アメリカでも多くのラーメン店は予約を取ることがないので、必然的に人気のラーメン店で食事をしようと試みた場合には行列に並ぶことになります。この点がまず通常のレストランと異なるところです。食事の前に行列に並ばされることは多くは愉快な体験にはならないはずなのですが、ラーメンに関してはむしろこの後に控えているおいしいラーメンを食べる期待感をさらに盛り上げることに一役買っている点が興味深いところです。更に目の前に提供されたラーメンを箸を用いて思い切りすする体験は(一般的には褒められたマナーではないこともあって)あまり他のレストランでは経験できないものかと思います。日本流のおもてなし接客も相まって、ラーメン店での食事体験は他のレストランでは味わえないちょっとした異国体験をもたらします。ニューヨークで一風堂がオープンしたときに、New York Timesが「わずか$13で飛ぶ日本への旅」と一風堂を紹介したことは大いにうなずけます。

最後に理由として取り上げたいのが、ラーメンそのものが持つ自由度の高さです。ラーメンがアメリカでブームになる前にも、寿司や天ぷらなど様々な日本料理が多くの注目を集めました。ただ、ラーメンが他の日本料理と異なっていたのが、レストランで自由にトッピングをすることが許された米国で初の日本料理だったという点です。確かに、寿司や天ぷらなどは基本的には食べ方のルールがある程度決まっているのに対して、ラーメンは自分の好みに応じて様々なトッピングをすることがレストランからも推奨されています。チャーシューや味玉など基本的なトッピングを好みに応じて追加したり、ニンニクやバターなど風味を増すトッピングやトウガラシなどで辛さを追加するのも自由です。このようなあらゆるトッピングを受け入れる懐の深さが、ラーメンの持つ自由度を表しているといえます。更にラーメンがもたらす自由度の高さが、ラーメンバーガーやラーメンピザなどアメリカで新たなラーメンメニューを生み出す原動力となっている点も見逃せないところだと思います。

こうしたラーメンが本質的に持つ人々を魅了する特性を考慮すると、米国ラーメンブームは今後もさらなる拡大を続けていくのではないかと考えられます。
 

■ラーメンブームの未来

現在まで続くラーメンブームは、インスタントラーメンで「ラーメン」という料理の存在を認識したアメリカ人が本格的なラーメンにたどり着く過程で生まれたものと考えられそうです。しかし、現在のラーメンブームを考えるうえで一点考慮しなくてはいけない点があります。それは、職人がスープにこだわったラーメンを提供するような本格的なラーメン店は、まだ都市部に集中しているということです。そのような状況を考えると、次に人々は「どこにいても本格的なラーメンを食べたい」という欲求を持つのではないでしょうか。このニーズを満たすために行われているさまざまな試みが、今後のラーメンブームの方向性に大きく影響を与えるのではないかと個人的には考えています。まだラーメン店が進出していないエリアへの店舗展開やオンライン上での高クオリティラーメンキット販売など、このニーズを満たす様々な試みが行われていますが、そんな中Myojo USAではこうしたニーズに応えるために、従来のインスタントラーメンで用いられていた乾麺とは異なる生麺を使用した、自宅で作れる本格的な味わいのラーメンをアメリカで販売しています。

PREMIUM SEAFOOD TONKOTSU RAMEN
PREMIUM SHIO TONKOTSU RAMEN
PREMIUM GARLIC MISO RAMEN
PREMIUM VEGETARIAN SHOYU RAMEN

上記の商品はアメリカのスーパーマーケットやオンラインストアでお手軽に手に入れることができますので、ご興味がありましたら是非手に取ってお試しください(以下のリンクから購入できる場所が調べられます)。
取扱店・オンライン
 

■結論

今回は、前触れもなく発生したかと思われるアメリカでのラーメンブームを、その発生原因から調べてみました。一見突発的に見えたこのブームも、調べてみると長い時間をかけて熟成された要因があることがわかり、非常に感銘を受けました。また、アメリカでのラーメンブームが日本の創作ラーメンブームに共鳴して発生した点も見逃せない要素です。まだまだ衰えを見せないラーメンブームですが、今後このブームがどのような展開を見せるのかはなかなか予想しずらいものがあります。ただ、ラーメンの自由度がもたらす「クリエイティビティ」と本格的なラーメンを食することのできる「アクセシビリティ」が、今後のブームの動向を理解する上でのキーワードとなるのではないかと個人的には感じています。ともあれ、これからもラーメンブームがもたらしてくれる数々の魅力的な体験を心待ちにしたいと思います。
 

参照:

アメリカでラーメンブーム到来!なぜここまで人気なのか?(2022年最新情報) | アメスマモバイル
米国ラーメンブームの裏に隠された4つの秘密 デザイン会社 ビートラックス: ブログ
ラーメンは国民食から世界食へ – 最新情報 – 新横浜ラーメン博物館
なぜ今アメリカで日本のラーメンが人気なのか | WIRED.jp – YouTube
「日本食レストラン=ラーメン屋」にまでなりつつある海外ラーメン市場。一風堂の戦略とインスタントラーメン市場も紹介 | 海外事業進出・海外展開支援・海外市場調査・海外調査ならプルーヴ株式会社
How ramen took over the world. How did we ever live without it? | by Timeline | Timeline
Rise of Ramen: A Q&A on One of the Hottest Trends in the U.S. | Symrise In-Sight
Why ramen restaurants have New Yorkers ‘hooked’ on Japanese noodles | amNewYork
How Japanese Marketing Secrets Sparked The American Ramen Revolution | Fast Company
Momofuku Noodle Bar – East Village – SeeNewYork.nyc
Momofuku (restaurants) – Wikipedia
David Chang – Wikipedia
America owes its ramen obsession to Nissin’s Top Ramen | The Takeout