National Noodle Day 2023を祝おう!麺の歴史と世界の麺を紹介します。

世界の麺料理

全国のラーメンファンの皆様こんにちは!来たる10月6日はなんと「National Noodle Day」、その誕生から4,000年以上も人類の食卓を支えてくれている麺の誕生をお祝いする日です。この記念日はアメリカからスタートしたものですが、麺料理好きの方であれば世界中どこからでも参加できます!ちなみに参加方法はいたって簡単、同日に麺を作るか麺料理を作るだけです。料理が苦手な方は麺料理を提供する近所のレストランに行ってもいいですし、インスタントラーメンを食べるのだって立派な参加方法です。10月6日は麺にまつわる食事をすることで、ぜひ全世界のnoodle lover達と共に、National Noodle Day 2023をお祝いしましょう。
なお、今回National Noodle Dayにおいて麺の誕生をお祝いするにあたり、Myojo USAはまず世界的に有名な麺の二大巨頭、中華麺とパスタのルーツを辿ることを足掛かりとして、麺の歩んできた歴史を振り返ってみることにしました。また、National Noodle Dayはアメリカにとどまらず、世界的な記念日です。そのことを実感するため、世界ではどのような麺料理が食べられているのか、地域ごとにご紹介します。これらのトピックは、National Noodle Dayで家族や仲間と麺料理を食べているときの話題としてピッタリだと思いますので、ぜひ最後までお付き合いください!

 

  • Index

 

■そもそも「麺」って何?

麺には幅広い定義があります。そこでこの記事で言及する「麺」については、日本の麺文化研究の第一人者である文化人類学者 石毛直道氏の、以下の定義に沿って話を進めたいと思います。
“穀物、マメなどの粉を主原料として、線状に加工した食品で、原則として、ゆでたり、煮たりして、主食、あるいは準主食的な料理の主材料として食べられるもの”

 

■麺のルーツをたどる(中国編)

「麺のルーツは中国?イタリア?」という議論は、長年麺愛好家たちの頭を悩ませてきました。しかし最近の研究では、2世紀頃の中国の文献で初めて麺の名前が出てきていることや、530-550年頃に成立した「斉民要術」という書物に登場した「水引餅」が麺の祖先と考えられていることから、中国で先に麺が登場したと考えられることが多いです。
なお、水引餅は手で伸ばす形で麺の形状を細長くしていましたが、伸ばした生地を刃物で切って加工する「切り麺」は、唐の時代に登場します。また、元の時代には乾麺の登場も確認されています。

 

麺のルーツをたどる(イタリア編)

次にイタリアの麺のルーツを見てみましょう。イタリアで麺といえば「パスタ」を連想しますが、パスタには「形状を問わず小麦粉を主体としたあらゆる練り物」が含まれますので注意が必要です。今回は麺の形状に注目して、一般的に我々がパスタと聞いて連想する細長い形状の乾麺が、いつ頃誕生したのかについて調べてみたいと思います。
まず1000年代には小麦粉を水で捏ねた生地を成形し、茹でて食する、今の生パスタの製法に近い方法で作られた食品が登場します(そもそもパスタの語源は、Impastare=捏ねるから由来しています)。それが現在でもイタリア料理に用いられるマカロニやニョッキです(こちらは残念ながら細長い形状をしていません)。そして同時期にシチリアで登場した「イットリーヤ(itriyyah)」が、イタリアにおけるスパゲッティのルーツだといわれています。
「イットリーヤ」とは聞きなれない言葉だと思いますので、その意味を探るべく過去の文献を参照してみましょう。まず中世アラブ人地理学者アル・イドリーシーは1154年にまとめた書物の中で、シチリア島北部にあるトラビアで「イットリーヤが大量に作られ、別の場所へ輸出されている」と言及しています。また、イスラムの哲学者であったイブン・シーナ(980-1038)の著作の中に「イットリーヤは、皮ひもの形をしている」と言及があったり、9世紀、医者であり辞書編纂家であったイシュ・バール・アリが、茹でたセモリナ生地を房にして乾燥させたものを「イットリーヤ」と呼んだことが伝えられています。
これらの言及を総合すると、アラブ世界で生まれたイットリーヤは形状や素材、製法から、現在のパスタに類似していることが窺えます。その後、9世紀ごろアラブ人に征服されたシチリア島へイットリーヤが伝わり、それが現在の細長い形状の乾燥パスタのルーツになったのではないかと考えられています。なんとパスタのルーツは中東にあったのです。

 

■アメリカに上陸した麺

最後に、アメリカにおいてどのように麺食文化が浸透していったかについて、触れたいと思います。まずアメリカに初めて麺食文化がもたらされたのは、第3代大統領トーマス・ジェファーソンによるものでした。1789年に彼がフランスから帰国した際、マカロニを作る機械を持ち帰ったことが伝えられています。更に時代は経過して、1848年には、フランス人のAntoine Zeregaがニューヨーク州ブルックリンにおいて米国初のパスタ工場を設立します。その後、19世紀から20世紀の前半にかけては、主に南イタリアからの移民が増加しました。彼らイタリア移民が故郷のイタリア料理をアメリカに持ち込み、更にアメリカで入手しやすい食材とアメリカ国内の人々の味に対する嗜好性の影響を受けて、スパゲッティ・ミートボールや、フェットチーネ・アルフレッド、マカロニ&チーズなど独自のアメリカン・イタリアンパスタ料理が生まれたのです。
また中華麺のアメリカ上陸は、1849年のゴールドラッシュ時代に広東省から来た中国移民によってもたらされた炒麺まで遡ることができます。これらを考慮すると、アメリカにおいてはパスタの上陸の方が中華麺よりもやや早かったように思われます。
そして現在の米国では、ベトナムのフォーやタイのパッタイ、韓国のチャプチェなどあらゆる国の麺料理が身近に体験できるようになりました。日本のラーメンに関しても、まず1973年にインスタントヌードルであるカップヌードルがアメリカに上陸します。そして21世紀に入るとデイビッド・チャンの「Momofuku Noodle Bar」を皮切りにラーメンブームが発生し、今や人気の外食メニューとして定着しました。更に現在では、高品質な生麺タイプのラーメンも、スーパーマーケットやオンラインストアで比較的簡単に手に入れることができるようになっています。こうして、アメリカにおいても麺は中国やイタリア同様に食卓で重要な位置を占めるに至ったのです。

 

Timeline of noodle historyTimeline of noodle history

 

*ラーメンの歴史については、こちらの記事をご参照ください。
*焼きそばの歴史については、こちらの記事をご参照ください。

■世界の麺料理

ここまで、麺がどのような経緯で誕生し、アメリカまでたどり着いたのかについて概観してみました。次に、National Noodle Dayが全世界の麺愛好家たちの間でお祝いできるユニバーサルな記念日であることの証拠として、世界各国の麺料理を地域別に1種類ずつご紹介したいと思います。

・ヨーロッパ(ドイツ):シュペッツレ

シュペッツレ

 

まずはドイツからシュペッツレをご紹介したいと思います。「なぜドイツ?」とお思いになった方もいるかもしれませんが、実は「noodle」という言葉はドイツ語の「Nudel」が語源になっているのです。世界の麺料理を紹介するにあたってトップバッターにふさわしいと思い、こちらの料理を取り上げています。
シュペッツレは南ドイツ、シュヴァ―ベン地方の名物料理で、ドイツ語で「小さなスズメ」という意味だそうです。麺の生地は小麦粉、塩、卵でゆるめに作ります。生地を茹でる際は、ストレーナーのような穴の開いた調理器具を通してお湯の中に生地を投下します。様々なシュペッツレ料理がありますが、代表的なのはケーゼシュペッツレです。こちらは、すりおろしたチーズと揚げタマネギをシュペッツレに混ぜた料理となっています。

 

・アフリカ:クスクス

クスクス

 

クスクスは、デュラム小麦を粉にして水分を含ませた後に直径1mmほどの粒状にしてから蒸して乾燥させたものです。クスクスと乾燥パスタが共にデュラム小麦を原材料としていることから、クスクスは最も小さな乾燥パスタと呼ばれることもあります。実は今回の記事の冒頭で、麺について「穀物、マメなどの粉を主原料として線状に加工した食品」と定義させていただいたのですが、クスクスはこの定義には当てはまりません。ただどうしてもアフリカ代表のパスタの一種として取り上げたかったので、ご容赦いただければ幸いです。クスクスはアフリカの北西部に位置するチュニジアやモロッコといったマグリブ地域の主食で、先住民ベルベル人の伝統料理として何千年も前から食されています。また、フランスやイタリアでも人気があるメニューです。食べ方は地域によって様々で、例を挙げるとチュニジアではトマトベースのスープが主流で、好みに応じて辛味を加えます。一方モロッコではサフランベースのスープが主流で、クミンやジンジャーなどの香辛料を混ぜ合わせます。

・北アメリカ(アメリカ合衆国):スパゲッティ・ウィズ・ミートボール

スパゲッティ・ウィズ・ミートボール

 

スパゲッティ・ウィズ・ミートボールは、ニューヨークに移住してきたイタリア系移民によって生み出された一品です。1888年にはスパゲッティ・ウィズ・ミートボールのレシピが既に出版されていたという記録もあります。当時のニューヨークではナポリを含むカンパニア州からの移民が食料店を営むケースが多く、彼らにとって仕入れやすい食材であったトマトペーストやオレガノ、ニンニクがこのパスタに利用されています。また、本国イタリアでもミートボールを使用したパスタは存在していますが、アメリカ版ミートボールパスタで使用されるミートボールはイタリア版よりも大きめとなっている点が特徴です。

 

・南アメリカ(ペルー):タヤリン・ヴェルデ

タヤリン・ヴェルデ

 

タヤリン・ヴェルデはスペイン語で「緑のパスタ」という意味です。ペルーには19世紀ごろからイタリア移民が流入しており、その関係から食文化もイタリア料理の影響を受けています。タヤリン・ヴェルデもイタリア料理の影響下にある一品といえそうです。見た目はイタリアのジェノベーゼパスタに似ていますが、タヤリン・ヴェルデではバジルの他にほうれん草も使用するため、少しジェノベーゼと味が異なります。またミルクとチーズも使用するため濃厚な味わいになっている点が特徴です。付け合わせにはBistec(ビステク)と呼ばれるビーフステーキが好んで使用されます。

 

・東アジア(韓国):カルグクス

カルグクス

 

カルグクスは小麦粉を使用した韓国の切り麺です。1670年頃に書かれた韓国の料理書には、この料理の原型についてすでに言及があります。作り方は、まず小麦粉に卵や塩、ゴマ油を加えて水で練ったものを麺棒で延ばします。この生地を包丁で麺状に切り分けてカルグクスの出来上がりです。韓国語で「カル」は包丁、そして「ククス」は麺類を意味していますので、カルグクスとはつまり「包丁で切った麺」という意味になります。出汁は一般的に、イワシや貝類、昆布、鶏肉、牛肉などで作られます。具には鶏肉のほか、刻み海苔やズッキーニ、椎茸などを使うことが多いです。また付け合わせには水キムチやキムチが添えられます。味付けは様々で、鶏や海鮮をべースにした辛くないものから、コチュジャンを使った辛みのあるものまで幅広いバリエーションがあります。

 

・東南アジア:ラクサ

ラクサ

 

ラクサはマレーシア、インドネシア、シンガポールといった東南アジア諸国において日常的に食されるスープ麺です。中華系の子孫を意味する「ババ・ニョニャ」料理を代表する食べ物です。ラクサは、15世紀ごろから東南アジア各国へ渡った中華系移民がもたらした麺料理が、現地のスパイスや調理法と組み合わされることによって生まれたと考えられています。麺は「ラクサ・ヌードル」と呼ばれる太い米麺がよく使われますが、細い米麺も用いられます。ラクサは地方によって味も麺も様々なバリエーションが存在しますが、おおまかにはエビベースのココナツカレー味であるカレーラクサと、酸味が効いた魚ベースのアッサムラクサ(サラワクラクサ)に分けられます。なお、アッサムラクサはCNNが行ったthe world’s 50 best foodsにおいて、見事7位を獲得しています。

・中央アジア:ラグマン

ラグマン

 

「ラグマン」は、新疆ウイグル、ウズベキスタン、タジキスタン、カザフスタン、キルギス、トルクメニスタンなど中央アジア全域でよく食べられているスープ麺料理です。麺は小麦粉で作った中細の手延べ麺です。食べる直前に麺が作られる点が特徴です。スープは羊肉または牛肉とトマトをベースに、赤ピーマン、タマネギ、ニンジン、セロリなどの季節の野菜をふんだんに使って煮込まれています。仕上げにディルやコリアンダーなどの香草を入れて完成です。地方によってレシピのバリエーションは様々ですが、大きくは汁麺タイプ、汁なし麺タイプ、炒め麺タイプに分かれます。なお、ラグマンという名称は中国の拉麺(ラアミエン)を語源にもつと考えられています。

■結論

今回の記事を執筆していて、小麦だけではなく米粉など様々な原料と製法で作られた麺とそれを使用した料理が、まさに世界中に存在しているという事実にまず驚かされました。思わず「人類は麺類」という安藤百福の言葉を思い出さずにはいられませんでした。
また近年はインターネットやSNSを通じて異なる文化圏の麺料理に関する情報も簡単に手に入ることで、世界中で各国の麺料理に対する関心が今まで以上に高まっています。こうした世界のあらゆる場所で発生した麺料理に対する需要の高まりが、現代では麺食文化の広がりを後押ししているかもしれません。Myojo USAも高品質な生麺を皆様にお届けすることで、少しでも麺食文化の発展に貢献を出来たらと考えております。
今回は麺に関する様々な情報をご紹介させていただきました。National Noodle Dayで麺料理を一緒に食べるご家族やご友人の方と、これらの情報をきっかけに盛り上がっていただけたら幸いです。なおNational Noodle Dayは、だれでも麺を作ったり麺料理を楽しんだりすることで気軽に参加できる記念日です。日ごろから慣れ親しんでいるお気に入りの麺料理を通じて参加いただいてもよいですし、せっかくの記念日ですのでこれを機会に新しい麺料理に挑戦してみるのもよいのではないでしょうか?その際には、本日の記事で紹介した世界の麺料理がヒントになりましたら幸いです。
今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。次回も興味深いヌードル関連情報をご紹介する予定ですので、楽しみにしてくださいね!

 

Reference links:
麺 – Wikipedia
パスタ – Wikipedia
マカロニ – Wikipedia
The Nibble: History Of Pasta
NATIONAL NOODLE DAY – October 6, 2022 – National Today
写真アーカイブス | 食文化を知る・学ぶ | 石毛直道食文化アーカイブス | 味の素 食の文化センター
麺の起源、系譜|世界の麺料理
パスタができるまで|パスタを知る|日本パスタ協会
Noodle Timeline – Confucius was a Foodie
A brief history of noodles and all their kinds | News, Sports, Jobs – Daily Press
The History of Noodles: How a Simple Food Became a Worldwide Staple
FOOD HISTORIES: NOODLES- WESTERN HISTORY — DEETS ON EATS
History of Pasta | Share the Pasta
The Culture and History of Noodles
History of Pasta and Its Influence in the U.S. – June Sohn – CHN/ITAL370W Noodle Narratives- Summer 2019
Who invented the noodle, Italy or China? : SBS Food
Noodle in Northern Europe, The | Encyclopedia.com
Noodle in Asia, The | Encyclopedia.com
パスタの歴史をひも解いてみる
リシュタ | ナポリタンはいつからあるの?~World cultural history’s Blog
イタリアワインとパスタを見つめながらの取り留めない話#10|勝鬨美樹|note
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イタリア乾麺(パスタ)の歴史 – 料理王国
シュペッツレ – Wikipedia
シュペッツレって何? Spätzle – じゃーまんぽてと.com
Tallarines Verdes Recipe (South American Green Noodles)
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Tallarines Verdes タジャリネス・ベルデス | keikoharada.com
Spaghetti and meatballs – Wikipedia
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