ラーメン好きなら押さえておきたい!
米国のラーメン業界で高い影響力を持つ人物を紹介します -ラーメンシェフ編-
公開日: 2024年11月14日/ 最終更新日:2024年11月14日
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全国のラーメンファンの皆様、こんにちは!今回も皆様の興味を刺激する話題をご用意しましたので楽しみにしてくださいね。今回は今日まで続くラーメンブームを支えてきた「人物」にフォーカスを当ててみたいと思います。以前に「アメリカでラーメンブームが起きた理由」という記事で、今日のラーメンブームがどのように形成されていったのかを詳しく掘り下げてみました。その記事では特にインスタントラーメンによるラーメン認知の浸透から21世紀に入って生じた本格ラーメン店によるラーメン認知のアップデートという事象を中心にご紹介しましたが、改めてブームを振り返ってみるにその過程で本格的なラーメンの魅力を伝えるべく奔走した当時のブロガーやユーチューバーに代表されるインフルエンサーの存在は無視できないほど大きいのではないか、と改めて感じました。また、こうした本格的なラーメン店が提供するメニューの魅力は店主の強い個性から生み出されることも多く、このことは消費者にとってラーメンという料理に強い付加価値をもたらしたことは想像に難くありません。そこで今回は改めてラーメンブームの火付け役となった方々に注目し、その中から今なおラーメン業界に高い影響力を持つキーパーソンについて2回の記事に分けてスポットライトを当ててみたいと思います。今回の記事ではまずラーメンシェフのカテゴリから4名の方を選出してみました。それでは始めましょう!
- Index
- アイバン・オーキン(Ivan Orkin)
- デイビッド・チャン(David Chang)
- 中村栄利(Shigetoshi “Jack” Nakamura)
- 島本圭造(Keizo Shimamoto)
- 結論
■アイバン・オーキン(Ivan Orkin)
Image by ©Kim Ahlström, Flickr.com
米国において高い影響力を持つラーメンシェフとして真っ先に思いつくのが、アイバン・オーキン氏です。若いころに寿司レストランでアルバイトをしたことがきっかけで日本文化に目覚めたアイバンさんは、Culinary Institute of America卒業後にニューヨークでいくつかの高級レストランでシェフとしての経験を積み、そして日本へと渡ることになります。そこで彼はシェフ時代に培った技術をベースに日本文化への情熱を表現する場として、2006年に東京で「アイバンラーメン」をオープンします(ラーメン店を選んだことは奥様の強い推薦もあったようです)。アメリカ人がラーメン激戦区である日本の東京でラーメン店を開くこと自体が稀有なことですが、しかもここで提供されていたラーメンが、ラーメンの味にうるさい日本のラーメンファンの舌も唸らせ、アイバンラーメンは押しも押されぬ人気店になったというのですから驚きです。現在、彼は日本のアイバンラーメンを畳み、ニューヨークのLower East Sideで「IVAN RAMEN」を営んでいます。そこでニューヨークのラーメンファンを楽しませ続けている彼のラーメンは、伝統的な日本のラーメンスタイルをベースにしつつもローストしたトマトなどのトッピングを組み合わせるなど、彼にしか提供できない非常にオリジナリティに富んだものとなっています。日本と米国のラーメン店で成功を収めた彼は、まさに型にはまらないラーメンの多様性を体現した存在と言えるでしょう。そんな彼が提供するラーメンを口にして「こんな素晴らしいラーメンを生み出したアイバン・オーキンが魅了された日本文化にぜひ触れてみたい」とインスピレーションを受けた方は少なくないのではないかと思います。
なお余談になりますが、日本で「アイバンラーメン」が営まれていた場所は現在、かつてアイバンラーメンで店長を任されていた方が譲り受け、別の屋号でサンマとマグロ出汁を特徴としたラーメンを提供するお店を営まれています。その名も「Senkyu(宣久)」といい、これは”Thank you”とも読むことができます。この話を聞いたときはなんだかアイバンさんが日本で築いた絆のようなものが感じられ、非常にうれしく思いました。
■デイビッド・チャン(David Chang)
Image by © Carl Mikoy, Flickr.com
米国のラーメン業界での影響力を語るうえで絶対に欠かせないのがデイビッド・チャン氏です。彼が2004年ニューヨークのマンハッタンで開店した「Momofuku Noodle Bar」が米国におけるラーメンブームの起爆剤となったことは、先のブログ記事(アメリカでラーメンブームが起きた理由)でも触れました。その後、彼はラーメン店以外にも高級レストランである「Momofuku Ko」やスイーツを提供する「Momofuku Milk Bar」、最近では家庭用調味料として「Chili Crunch」をヒットさせるなど、活躍を見せています(Chili Crunchヒットの理由は先のブログ記事“中華、日本、タイ、インド、ベトナム、韓国など、アジア料理が現在アメリカで大人気の理由”でも触れていますので、ご参照ください)。そんな彼のもう一つの特徴は多方面へのメディア露出です。食をテーマにした雑誌「Lucky Peach」の創刊に始まり(第一号の特集は“ラーメン”でした)、ポッドキャストの配信や各種テレビ番組へのゲスト出演など、枚挙にいとまがありません。その中でも特に印象的なのは、「アグリー・デリシャス」「デイビッド・チャンの世界を食べつくせ!」など、彼がホストを務めるNetflixのグルメドキュメンタリーです。そこで彼が見せる伝統的な食文化に挑戦し続ける姿は、時として批判を浴びることもありますが、その革新的な姿勢は確実に飲食業界を推進させる役割を担っていると言えます。このような革新性を、彼がブレイクスルーするきっかけとなったラーメンと結び付けてとらえている方も多いのではないかと思います。そういった意味では彼がラーメン業界へもたらす影響は今なお無視できないものがあると言えます。惜しむらくは、彼が日本のラーメン店とコラボレーションした事例がまだないことです。きっと今まで日本人もアメリカ人も味わったことのないような刺激的なラーメンが生まれるのではないでしょうか?
ちなみに「Momofuku Noodle Bar」でもう一つの目玉メニューといえる「ポークバン」は、今日では米国におけるラーメン店でのアペタイザーとして人気のメニューになっています。日本におけるラーメン店でのアペタイザーは餃子以外にあまり選択肢がなかったのですが、そこに新たなメニューを創出し定着させた彼の洞察力にはただ敬服するばかりです。
■中村栄利(Shigetoshi “Jack” Nakamura)
Image by © Carl Mikoy, Flickr.com
現在、ニューヨークのLower East Sideのラーメンダイニング「NAKAMURA」にて腕を振るう中村栄利氏のキャリアは、まず日本において彼が若干22歳の時にラーメン店「中村屋」を開店したことから始まります。独学で生み出した完成度の高い透き通ったスープとともに、独特の湯切りモーション(ファンからは「天空落とし」と呼ばれています)が話題を呼び、都心から離れた場所にあるにもかかわらず連日行列ができるほどの人気店となりました。ちなみに、現在ではよく見られる「チャーシューを七輪で焼き、香ばしさを加える」という工夫も彼が編み出したものです。
なお、彼の特徴的な麺の湯切りモーション(天空落とし)は、こちらの動画で見ることができます。
日本のラーメン業界において輝かしい成功を収めた彼は2009年からは米国に渡り、自身のラーメン店である「NAKAMURA」を2016年に開店しました。ちなみにサンディエゴ留学中のサーフィン仲間にラーメンをふるまって喜ばれたことが、彼のラーメンシェフとしての原体験になっているようです。そしてここを本拠地として日夜日本のラーメン文化を伝えるべく尽力されており、すでに現地では日本同様に「Ramen God」の称号とともに一目置かれる存在となっています。それは単に日本で受け入れられたラーメンのスタイルを米国に持ち込むだけにとどまらず、現地の嗜好や素材を取り入れた独自のラーメンを生み出し続けるその熱意に対して贈られたものだと思われます。以下に紹介する「Steak Mazemen」は、そんな彼のこだわりが随所に感じられる素晴らしい逸品となっています。おそらく中村氏はニューヨークが持つ多様性を一身に受けながら、今後もラーメンの地平線を大きく切り開いていくことでしょう。これからも彼の活躍にはますます目が離せません。
ちなみに米国で評判を呼んでいるラーメン店の一つにYuzuフレーバーが特徴的な「AFURI」があげられますが、このお店のオーナーである中村比呂人氏はここで紹介した中村栄利氏と実の兄弟だということはご存じでしたでしょうか?AFURIはすでに米国でいくつかの店舗を運営しているのですが、そのうちの一つはニューヨークのブルックリンにあります。実の兄弟が母国日本を離れ、ニューヨークでもお互いラーメン店を経営して切磋琢磨しているというのは非常に興味深いです。以下に紹介します「RAMEN FEVER」というドキュメンタリーではもう少し詳しく彼らについて紹介されていますので、興味のある方は是非ご覧ください。
■島本圭造(Keizo Shimamoto)
2013年にラーメンバーガーを世に送り出したことで鮮烈なデビューを飾った島本圭造氏のラーメンに対する情熱は、幼少期に家族と旅行で訪れた日本の各地で出会ったラーメンをきっかけに育まれました。ロサンゼルス生まれの日系二世である彼は日本を訪れる機会も多く、そこで食した数々のラーメンを通じて次第にその魅力に惹かれていったようです。大学卒業後は金融業界に就職しましたが、2007年の世界金融危機が彼にキャリアチェンジを迫るのと同時にラーメンへの情熱も呼び起こし、ついにはラーメン職人の技術を学ぶために日本へと渡ることを決意します。日本では前述のアイバン・オーキン氏にに弟子入りしたり、Bassanovaというラーメン店では店長を務めるにまで至っています。その頃の様子は「Ramen Dreams」というドキュメンタリーに克明に記録されており、そこでは島本氏のラーメンに対する並々ならぬ情熱をうかがい知ることができます。
また日本滞在時に島本氏は、日本中のラーメンを食べ歩くために北は北海道から南は九州まで全国を旅しており、多い日は28日で55杯ものラーメンを食べ歩いていたというのですから驚きです。その時の経験がきっと後のラーメンバーガーの誕生につながったのではないかと思います。
Image by © Shinya Suzuki, Flickr.com
その後島本氏は、ラーメンバーガーの発想の原点となる「喜多方ラーメンバーガー」に出会います。喜多方ラーメンバーガーは、麺を蒸し固めたものでバンズを代用していますが、具材として豚の角煮が採用されている点が島本氏のラーメンバーガーと大きく異なる点です。
これはおそらく喜多方ラーメンバーガーが「喜多方ラーメンをバーガーの形で再現する」という発想から生まれたものだったからだといえます。この喜多方ラーメンバーガーを食した島本氏が「バーガーというからにはパティはビーフでなくてはいけない」と考えたところに、ロサンゼルスにルーツを持つ彼ならではの慧眼があります。おそらくこれは日本式のラーメンに固執した日本人からはなかなか生まれない発想で、この発想の飛躍がラーメンバーガーの全米でのブレイクにつながったことはラーメンの多様性を語るうえで非常に印象的な出来事といえます。
後に彼はニューヨークとカリフォルニアで「Ramen Shack」というラーメン店をオープンさせます。そこで提供されるラーメンは日本でのラーメンに関わる様々な経験に裏打ちされた確かなものとなっており、地元のラーメンファンをうならせてきましたが、残念ながら近年は体調不良などによる理由から閉店しています。現在は一線からは距離を置いていますが、日本とアメリカの食文化を融合させラーメンの新しい可能性を切り開く力を持つ島本氏は、これからも米国ラーメン業界にとって欠かせない存在だと言えます。また彼は私たちのブログでもその豊富な経験に裏打ちされた興味深い記事を寄稿していますので、興味のある方はこちらにも目を通していただけると幸いです。
■結論
今回は今なお米国ラーメン業界で強い影響力を持つ方々を、まずラーメンシェフのカテゴリーからほんの一部ですがご紹介しました。皆様はどのような感想を持たれたでしょうか?アメリカ人でありながら日本のラーメンに魅了され独自のラーメンスタイルを築いた方もいれば、日本で築いた自身のラーメン技術をもってアメリカにおけるラーメンブームに貢献されている方もいたりと非常に多種多様でしたね。ラーメンを介してこのような日米間文化交流が行われている状況を見ると、改めてラーメン自体が持つ懐の深さに驚かされます。
それでは今回の記事はここまでにしたいと思います。次回は、米国ラーメン業界の中で影響力の高い方々の中から特にインターネット上でのプレゼンスが高いインフルエンサーの方にスポットライトを当ててみたいと思いますので、楽しみに待っていてくださいね!
Reference links:
Ivan Orkin – Chicago Gourmet
今週の1本 『シェフのテーブル』 — 字幕翻訳・吹き替え翻訳 日本映像翻訳アカデミー|映像翻訳 翻訳学校 翻訳受注
いつか東京に戻る日を夢見て 「アイバンラーメン」店主がいまNYで続けていること:朝日新聞GLOBE+
米国人ラーメンマスター、日本の次は故郷で挑戦 “本物のラーメンをニューヨーカーに…” – NewSphere
ニューヨーク通信 外食ビジネスの新発想(91)Ivan Ramen アメリカ人が作る正統派日本ラーメン – 日本食糧新聞・電子版
世界でブレイク&賛否!韓国移民のラーメン王、デイビッド・チャンとは? – QJWeb クイック・ジャパン ウェブ
ニューヨークでラーメンブームを巻き起こした「momofuku noodle Bar」の仕掛人、デイビッド・チャンの新たなる挑戦|@DIME アットダイム
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伝説の店『中村屋』が休業へ 天才ラーメン職人が思い描く新たな夢とは?(山路力也) – エキスパート – Yahoo!ニュース
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How Keizo Shimamoto invented the Ramen Burger | CNN
Keizo Shimamoto Opens NYC’s Best Ramen Shack | Condé Nast Traveler
Ramen Shack, an OC Restaurant From Ramen Burger Inventor, Closes Permanently – Eater LA
世界が注目する「ラーメンバーガー」って何? その答えはニューヨークにあった | 外食 | 東洋経済オンライン
ニューヨーク通信 外食ビジネスの新発想(81)ラーメンバーガー 一気に全米の注目浴びる – 日本食糧新聞・電子版
「ラーメンバーガー」に見るラーメンの未来(山路力也) – エキスパート – Yahoo!ニュース